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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆
耳福池周辺を回るコース、その半分程まで来ている城山 水樹とヒュー・ヒューバートは、静かな雰囲気からかはたまた周囲のなにがしかに敏感になっているのか、言葉少なになっているもののぴったりと身体を寄せ合いながら、進行方向の次の光源たる竹灯篭へとゆっくり進んでいく。
予想外に暗く足元も危なそうであれば、ヒューは出来うる限り水樹を支えるよう、エスコートし歩きやすいように促してやる。
ヒューの思いやりにはちゃんと気付いていつつも、良く言えば雰囲気がある、悪く言えば何か出て来そう……、そんな周囲の暗さから水樹はほぼしがみつくようにヒューの腕を取ったままついていく形である。
当たって欲しくない方のカンに限って当たるというもの。
二人が近距離まで寄った竹灯篭が、淡く揺れたかと思うとそれは火の玉に姿を変えて。
恋人同士を儚くも離れ離れにさせることとなった。
「！？ ヒュー！？」
ちゃんと絡めていたはずのぬくもりが、突如消えればあわてて水樹は周囲に視線を走らせる。
―― だ、大丈夫大丈夫……子供じゃないんだから、落ち着いて……そうだっ、携帯で連絡を！
巾着からスマホを取り出し、彼の番号をタップし……ようとするも、一向に反応どころか電源が入らない。
思いついた方法があえなく不可能となると、先程まで自分を導くように心に灯っていた光に冷たい水を注ぎこまれるが如く、水樹の胸に心細さと不安が一気に満ちていった。
もはや無意識に、唇から何度も愛しい人の名前を呼び続ける。
すると、間もなくして彼の声がすぐそばから聞こえて来た。
「ヒュー？ 良かった！ そこに……」
顔中に安堵の色を浮かべ、すぐさま駆け寄ろうとした水樹の足がぴたりと止まる。
今聞こえて来た声。それが複数の方向から聞こえてくるのだ。
―― なんだか変……。
その声は次第に、自分へと近づいてくる気配。『水樹』『おいで』、あくまで優しく穏やかな彼らしいその声の持ち主。
だけれど……。
―― この違和感は、なに……？
だから水樹は問いかける。カマの掛け方なんて分からない。ただ真っ直ぐ、真っ直ぐに。
「ねえ……ヒュー、今私と正面から向き合ってるのよね？ 私とあなたは同じ背丈だから、自然と視線が合うの。
その時に見せる、はにかむような表情や声が感じられない……本当にヒューなの？」
一方 ――
本物のヒューの方でも、彼女が消え狼狽えたところへ彼女の声が鳴り響いていた。複数の方角から。
安心しかけたヒューの表情に、警戒の色が滲み出る。
確かにそれは彼女の声そのものだ。
しかしその声にも気配にも、彼女が持つ本来の存在感のような何かが欠けている。
やがて近づいてくる気配たちへと、ヒューは不審の思いを見せず言葉を投げかけた。
「もう僕を許してくれるのかい？ ささやかなことで君を怒らせてしまった、この僕を……」
水樹の声は笑うように答えた。
『もちろんよ。大好きなヒュー、もう怒ってないわ』
その後に続くように、水樹の声たちが右から、左から、自分を誘う。
ヒューは微笑んだ。
どこまでも真っ直ぐな彼女。
怒った時とてそれは同じ。そんな簡単に、媚びるように許す言葉は口にしないんだよ。
少し前にした喧嘩の事を思い出しては、息だけで一度笑った。まぁ、もうあまり経験したくないことではあるけれど。
次には闇の中の幾人もの彼女へ向けて、きっぱりと言い放つ。
「君は姿形は水樹そっくりかもしれない。けれど心まではそっくりにできない」
その瞬間、声たちがザワついた隙をついてヒューは駆け出した。
闇の向こう、何かを隠すよう声たちが固まっていたその向こう側を目指して。
「―― 水樹！」
「えっ？ ヒュー！？」
誰もいないように見える茂みへ、何かと対峙している水樹の横顔が暗闇の中でもくっきりと浮かび上がれば、ヒューは走り寄った勢いのまま水樹を抱き締めた。
刹那、水樹は悟った。
―― ああ……本物の、私のヒューだ……。
いつの間にか気配が消えていた彼の偽物の声たちにはもはや気付かずに。水樹はその背中へ躊躇うことなく両手を回す。
「ヒュー……良かった逢えて」
「水樹……」
何が起きたかを確認するよりも、大切な儀式かのように。
お互いの唇が強く強く、押し当てられる。
確かに逢えぬ時間の方が多いけれど。
体温を感じられる時間は少ないけれど。
出会った瞬間からきっと二人の心は思っていたのだ。『見つけた』と。
結ばれた絆は、どんなに長く離れていても必ず二人を引き寄せる。
消えていた提灯のあかりが、二人の想いに応えるようにして仄かに、くっきりと、二人を照らし出すのだった。
予想外に暗く足元も危なそうであれば、ヒューは出来うる限り水樹を支えるよう、エスコートし歩きやすいように促してやる。
ヒューの思いやりにはちゃんと気付いていつつも、良く言えば雰囲気がある、悪く言えば何か出て来そう……、そんな周囲の暗さから水樹はほぼしがみつくようにヒューの腕を取ったままついていく形である。
当たって欲しくない方のカンに限って当たるというもの。
二人が近距離まで寄った竹灯篭が、淡く揺れたかと思うとそれは火の玉に姿を変えて。
恋人同士を儚くも離れ離れにさせることとなった。
「！？ ヒュー！？」
ちゃんと絡めていたはずのぬくもりが、突如消えればあわてて水樹は周囲に視線を走らせる。
―― だ、大丈夫大丈夫……子供じゃないんだから、落ち着いて……そうだっ、携帯で連絡を！
巾着からスマホを取り出し、彼の番号をタップし……ようとするも、一向に反応どころか電源が入らない。
思いついた方法があえなく不可能となると、先程まで自分を導くように心に灯っていた光に冷たい水を注ぎこまれるが如く、水樹の胸に心細さと不安が一気に満ちていった。
もはや無意識に、唇から何度も愛しい人の名前を呼び続ける。
すると、間もなくして彼の声がすぐそばから聞こえて来た。
「ヒュー？ 良かった！ そこに……」
顔中に安堵の色を浮かべ、すぐさま駆け寄ろうとした水樹の足がぴたりと止まる。
今聞こえて来た声。それが複数の方向から聞こえてくるのだ。
―― なんだか変……。
その声は次第に、自分へと近づいてくる気配。『水樹』『おいで』、あくまで優しく穏やかな彼らしいその声の持ち主。
だけれど……。
―― この違和感は、なに……？
だから水樹は問いかける。カマの掛け方なんて分からない。ただ真っ直ぐ、真っ直ぐに。
「ねえ……ヒュー、今私と正面から向き合ってるのよね？ 私とあなたは同じ背丈だから、自然と視線が合うの。
その時に見せる、はにかむような表情や声が感じられない……本当にヒューなの？」
一方 ――
本物のヒューの方でも、彼女が消え狼狽えたところへ彼女の声が鳴り響いていた。複数の方角から。
安心しかけたヒューの表情に、警戒の色が滲み出る。
確かにそれは彼女の声そのものだ。
しかしその声にも気配にも、彼女が持つ本来の存在感のような何かが欠けている。
やがて近づいてくる気配たちへと、ヒューは不審の思いを見せず言葉を投げかけた。
「もう僕を許してくれるのかい？ ささやかなことで君を怒らせてしまった、この僕を……」
水樹の声は笑うように答えた。
『もちろんよ。大好きなヒュー、もう怒ってないわ』
その後に続くように、水樹の声たちが右から、左から、自分を誘う。
ヒューは微笑んだ。
どこまでも真っ直ぐな彼女。
怒った時とてそれは同じ。そんな簡単に、媚びるように許す言葉は口にしないんだよ。
少し前にした喧嘩の事を思い出しては、息だけで一度笑った。まぁ、もうあまり経験したくないことではあるけれど。
次には闇の中の幾人もの彼女へ向けて、きっぱりと言い放つ。
「君は姿形は水樹そっくりかもしれない。けれど心まではそっくりにできない」
その瞬間、声たちがザワついた隙をついてヒューは駆け出した。
闇の向こう、何かを隠すよう声たちが固まっていたその向こう側を目指して。
「―― 水樹！」
「えっ？ ヒュー！？」
誰もいないように見える茂みへ、何かと対峙している水樹の横顔が暗闇の中でもくっきりと浮かび上がれば、ヒューは走り寄った勢いのまま水樹を抱き締めた。
刹那、水樹は悟った。
―― ああ……本物の、私のヒューだ……。
いつの間にか気配が消えていた彼の偽物の声たちにはもはや気付かずに。水樹はその背中へ躊躇うことなく両手を回す。
「ヒュー……良かった逢えて」
「水樹……」
何が起きたかを確認するよりも、大切な儀式かのように。
お互いの唇が強く強く、押し当てられる。
確かに逢えぬ時間の方が多いけれど。
体温を感じられる時間は少ないけれど。
出会った瞬間からきっと二人の心は思っていたのだ。『見つけた』と。
結ばれた絆は、どんなに長く離れていても必ず二人を引き寄せる。
消えていた提灯のあかりが、二人の想いに応えるようにして仄かに、くっきりと、二人を照らし出すのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年09月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年09月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年09月29日 11時00分
