【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆｜リアクション

【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆

　頑張って背伸びして、嘉渡洲稀跡と一緒に提灯を持って歩く曖浜瑠樹の様子に、大分歩いた後ようやく気付けば、稀跡は柄の上の方へ手を移動させ、瑠樹が持つ部分を持ちやすいように低く下げてやったり。
　気遣いに、にっこお☆と笑んで伝えながら、瑠樹は次の灯りを指しながら。

「稀跡お姉さんも、猫さん飼ってるんだねえ。オレとおんなじだぁ」
「ええ……先月越してきたばかりで。寂しい、と感じるわけでは無いけれど……居ると癒されるわね」
「わ、オレもね、去年寝子島引っ越してきたんだよぉ！
　えへへ～、お姉さんとオレ、なんか似てるとこたくさんだねえ」
「そうね……。それにしても、大分暗いのね……肝試しも兼ねているとか、ないわよね」
「肝試し……お化け、出る！？」

　にこにこお話していたかと思えば、ぴゃっ、と驚くように表情をコロコロ変える瑠樹へ。
　ごめんなさい、怖がらせるつもりはなかったの、と謝罪をぽつりと口にしてから、稀跡は瑠樹が指していた灯りへ視線をやると、

「あの灯り、猫の目みたいね……」
「にゃんこのお目目？　あ！　うん！　オレもさっきそう思ったんだぁ」

　大好きな猫の単語に、またころりと顔を輝かせたのを見て、稀跡もちょっぴりホッ。

「暗い所にいると、ぴかーって光るんだよぉ！」
「キャッツアイ、猫の目と呼ばれる石もあるのよ。さすがに暗い所で光りはしないけれど」
「猫さんのお目目な石！？　わーっ、どんなのだろ」
「悪霊を退散させるお守り、と言われもするから、あると勇気がもらえる……かもしれないわね」
「稀跡お姉さん、詳しいんだなぁ！」

　この辺にあったりしないのかなぁ、なんて言いながら足元へきょときょと視線走らせる瑠樹へ、
『さすがに落ちていたりはしないと……』とはあえて口にせず、歩く速度を少し緩めて瑠樹のペースに合わせてやる。
　実は先の灯りが消えていたりしたのだけれど、全く気付かず歩く二人の下へも雲が存在感示すようにふわっふわ～と降りて来た。
　それに同時に目を留める二人。
　目の前で、先程話していたからか猫の形を取る雲の様子へ、驚くもやはりどこか似たリアクションで。

「にゃんこな雲さーん！　面白そうだねぇ……せっかくだし、乗ってみようよぉ！」
「イベントの一環、かしら？」

　警戒心という字が浮かんで来ないイッツアマイペースコンビ☆
　お互い提灯に気を付けながら、支え合いながら猫の背中あたりへと乗っかってみる。
　まるで本当にアトラクションのように、体重がかかったのを確かめて徐々に空へと舞う猫さん雲。

「わぁー……寝子島の上を飛んでるよぉ！」
「……瑠樹さん、高所は平気？」
「コショー？」
「こうしょ……高い所は怖くない？」
「あ！　うんオレ全然大丈夫だよぉ♪」
「そう……提灯、落とさないようにね」

　はしゃいでいた瑠樹、ハッとすれば提灯の柄をしっかりと握り直しながら。
　どこまで行くんだろぉ……このままお空の上まで行けるかなぁ？
　ちょっぴり期待を込めて、高度を上げる空をずっと見上げていると、その気持ちが通じたように夜空覆っていた灰色の先へ抜けた。

「わ、わあ！　にゃんこ雲さんが連れてきてくれたよぉ！　天の川も、星空も綺麗だねぇ……！」
「本当に綺麗、ね……宝石輝石を散りばめた宝石箱みたい」

　突然視界に広がった満天の星空。その煌めきに暫し二人は感動を噛み締める。
　織姫と彦星は……星の方が見えるかしら？
　折角だし願いを口にしてみようかと思いつけば、まだ瑠樹が星に夢中なようならもう少し静かにしていようか、とお隣りへ視線をやると。

「サンマさんやマンボウくんや、他のゆるキャラさん達や縫いぐるみさん達やカプセルギアさん達や……
　皆と一緒に、楽しく遊べますようにー！」
「これからも……この輝きのような幸せが、私や瑠樹さんや皆に降り注ぎますように」

　楽しそうな声音で紡がれた願い事へ、そっと笑みを溢してから。稀跡もあとに続いて願いを言葉にした。

　ひとしきり夜空散歩を堪能した後。
　地面へと舞い戻って来た二人は、『楽しかったよぉ、ありがとうなぁー！』『ありがとう……また、ね』と
　空へ戻っていく猫雲さんへそれぞれお礼を送ってから。

「さぁ、ここからまた歩いて行きましょう。地上の煌めきが、私達を待っているわ」
「上から見たここの灯りもキレイだったもんなぁ！　よぉっし、ゴールまで頑張ろうっと！」

　すっかり息ピッタリに、提灯を握り直して。
　嬉しそうな声と、静けさの中に温かみ帯びた声が、道々響くのだった。

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