ワールドツアー＜イタリア編＞｜リアクション

ワールドツアー＜イタリア編＞

○カプリ島

　八神修は、目に映る外国の景色に目を疑っていました。
　そこは夜の駅。表示には『ナポリ中央』と記されていました。
「気づいたらナポリか……」
　そんなとき背後に気配を感じ。
　振り向こうとした修の目が、手で覆われました。
（えっ、あおい！？）
　そう思ったのと、
「だーれだ？」
　と言う声が聞こえたのはほぼ同時でした。
「あおい」
　その声に手が離されました。
「わかった？」
　微笑む七夜あおいに、
「……そりゃあ分かるよ、あおいの声だし」
　修は満足げな笑みを返すのでした。
「また神魂かな。オーストラリア楽しかったね」
　修の言葉に、あおいは頷きます。
「また修くんにガイドお願いできるね。遊びに行こうか」
「うん、遊ぼうか」
　ぐっ！　と親指を立て胸を張る修です。
「どこに行きたい？　ローマでもベネチアでも行くよ」
「うーん、イタリアのことあまり知らないから、どこがいいかわからないよ。どっちも楽しそう」
　迷うあおいに共感する様子で、
「イタリアは見所が沢山で迷うね。ナポリ観光も良いよ。港町だし魚料理も美味しい」　
　修が言うと、あおいは思いだした、という顔をしました。
「イタリアってパスタが名物だよね」
「うん、ナポリにナポリタンはないけどね」
　そう言って笑う修に、あおいもにっこり笑うのでした。
「修くんのお勧めはどこ？」　
「ああ……それなら」

　それから二人は夜明けの海へ向かいました。
「カプリ島？」　　
　首を傾げるあおいに、
「そう。青の洞窟って知ってる？」　
　あおいの青い瞳を見ながら、修が尋ねます。
「聞いたことあるよ。イタリアにあるんだね」
「有名だから混雑するけど、幸い今は早朝だ」
　ひと気のない船着き場に着くと、男がモーターボートの点検をしていました。
「青の洞窟に行きたいんだが」
「天候は問題ない、1時間後に船が出るよ」
　眠そうに答える男に近づき、修は耳打ちしました。
「定員分払う。２人だけの貸切を頼む」　
　男は目を見開き、それからウィンクしました。
「喜んで」
　支払いを済ませた修はあおいに向き直ります。
「船を出してくれるってさ。俺たちついてるな」　
「すごいね」

　洞窟近くでペアボートに乗り換え、二人は青の洞窟に一番乗りしました。
　そこは一面の青の世界。
「光の芸術だ」
「綺麗……」
「ああ、別の世界みたいだな」
　二人の話し声が洞窟に反響します。
「やっほー」
「修くんでもそんなこと言うんだ。登山みたい」
　修の掛け声に、あおいが笑いました。
「ベネチアのゴンドラもロマンチックだけど、青の洞窟のペアボートも良いね」
　あおいは頷きます。
「この海、潜ってみたいなあ……」
　こうして二人は青の洞窟を満喫したのでした。

　洞窟の後は島観光。
「お土産屋さんだね」
「行ってみよう」
　土産物屋には、皮製サンダル、レモンのお酒、飴やチョコ……様々なものが並んでいました。
「この人形、可愛い！」
　陶器人形を見てはしゃぐあおいにほっこりしながら、修は言います。
「色々買おう」
　お土産を買い終えた頃には、大分暑くなっていました。
「あそこのカフェで休憩しよう」
「修くんは何飲む？」
「それじゃ、レモンジュースにしよう」
「じゃあ、私も」
　海の見えるカフェで、二人は甘酸っぱいレモンジュースを味わいました。
「美味しいな」
　修は微笑んであおいに言いました。
「今日は有難う。一緒に来れて良かったよ」
「こちらこそ。私も楽しかった」
　あおいの笑顔を、修は満足しながら見つめました。

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