幻想遊戯～お前もナポリタンにしてやろうか～｜リアクション

幻想遊戯～お前もナポリタンにしてやろうか～

「これでも……くらえ！」
　河島澪はスクロールを発動させ、マジックミサイルを撃った。場所は寝子島だ。澪は地域の住民の避難を手伝いながらも、寝子島に攻め入ってくるパスタ兵を撃退していた。手早くパスタ兵が持っていた銃器を奪い取ると、各種チェックをする。
「……よし、何とか使えそうだな」
　澪は大学の射撃サークルに所属している。ライフル銃と弾薬があるなら、何とか戦う手段を確保することができると考えたのだ。
　その様子を見ていた旧市街地の私立探偵、天利二十は呟いた。
「スクロールの回数には限りがあるからな……とはいえ、弾薬も無限じゃねぇ。大将を叩かねぇとジリ貧だぜ」
「その通りだね……何か策はあるかい？」
　銃のチェックを済ませ、住民の避難状況を確認しながら、澪は返す。
「オーソドックスに潜入して暗殺だろうな……つか、今それどころじゃねぇ」
　天利もまた旧市街地で襲い来るパスタ兵から住民を守ろうと努力していたのである。
　だがしかし、従来の持病であるギックリ腰に襲われてしまっては、どうすることもできなかった。あわやというところを澪に助けられたのである。
「大丈夫ですか？　なんかおじいちゃんみたいですねー」
　その天利を一応介助してくれているのが、屋敷野梢である。
「……いやその……一応まだ４０代なんで……つか腰は怖いぞ、年齢問わずな。学生さんたちも気をつけろ……特に女性はな」
「はーい」
「……大きなお世話だね」
　澪はサラリと受け流すと、装備を確認して、梢に向き直った。
「……怪我はないかい？」
「ええ、何とか。あなたは？」
「今のところ大丈夫だ……なぁ、ナポリタンになったって構わないが、奴らの手下になんかなるつもりはないからね」
　軽い傷を受けただけでも、６時間程度でパスタ人にされてしまうのである。無理は禁物だった。
「ええ……そうですね……ボスの場所……どこだろう……やっぱりてっぺんですかねー……バカとエラソーな人は高いとこが好きだっていうし……」
　何事かを考え込んでいる梢。澪はふと視線を合わせて、梢に迫る。
「もしそうなったとしても、どうせなら君のような可愛いお嬢さんに食べて欲しいかな」

「んーえーと、え？　あっ？」
　何となくしか聞いていなかった梢は狼狽して、澪の視線を避ける。
「おーっととと、それじゃあ私そろそろ行きますね！　天利さん、夜明けまでには戻りますから、それまで無茶しちゃだめですよー！」
　巨大要塞パスターＸからパスタ光線が発射されるのは夜明け頃だ。それまでに砲台を破壊するか、大総統であるナポリターナ・スパゲッティーノを倒さなければならない。
　あまり時間は残されていなかった。梢は天利と澪に軽くを手を振りながら小走りに去っていった。彼女は自らのろっこんで蝶に変身することができる。単身で海を渡ることは容易だろう。

「……フラれたか」
　その後姿を見送りながら、澪は悪戯っぽく舌を出した。
「……やってる場合か。まぁ、助けてくれたことは感謝するが」
　天利が呆れ顔で呟いた。腰を抑えながら。
「とりあえずは大丈夫そうだね……こちら側で被害を受けた女性陣がもし居たら教えてくれ。可哀想だが、６時間に到達する前に魔術で閉じ込めておこう」
　澪はスクロールを確認する。まだロックの魔術を使うことはできる。
「そうだな……まぁ、俺もスクロールは持ってるから、その作戦はこちらで引き継ぐぜ……学生さんは、行くんだろ？」
　天利の言葉に、もう一度手元のライフルを確認して、澪は頷いた。
「ああ、もちろんだ。何にせよ、大総統を倒すという目的には変わりないからね」

　一方、いち早く蝶に変身して海を渡る梢は、海上から敵の要塞を眺めていた。その姿は、まるっきり巨大な食品サンプル。
「何度見てもまぁ……」
　シュールな光景だった。しかし梢はすぐにも持ち前の回転の速さを活かして、行動を確認していく。

「まぁ、潜入は得意です……腕がなりますね……まずは要塞の周辺を確認して……と。いざ戦闘には少し作戦が必要ですねー……うーん」

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