『うさぎ屋』でお好み焼き食べよう！｜リアクション

『うさぎ屋』でお好み焼き食べよう！

●偶然の再会

　寝子島中学校。
　仙藤蒼は授業が全て終わると、大きく伸びをした。これから自由時間である。

「帰ったらあのゲーム開けよっと」

　普段なら放課後はゲーセンへ直行するのだが、今日は数日前に買ったゲームをするためにまっすぐ家へ帰ることに。やや駆け足で家に着くとすぐに制服から私服に着替え始める。

「はやくゲームしたいな～」

　頭のなかはゲームのことでいっぱいだった。ところが着替えている最中に、どこからかお好み焼きのいい匂いが流れてきた。美味しそうな匂いに、蒼はとにかくお好み焼きが食べたくなってくる。
　どうしようかと迷っていると、そこへちょうどいいタイミングで姉である仙藤紫が大学から帰ってきた。紫は荷物を置いて椅子に腰掛けると、小さくため息をついた。

（今日の夕飯はどうしよう……）

　今日は両親が東京に出かけていて、帰りは遅くなるという。ということは当然夕飯は自分が用意するか、もしくは外食か。選択肢が浮かんでは消える。どうしたものかと思案していたら蒼が紫のもとへやってきた。

「おかえり」
「ただいま」
「ねえ！　お好み焼き食べたい！」
「お好み焼き？」

　蒼の突拍子もない提案に思わず首を傾げる紫。しかし蒼はお好み焼き熱を真剣に伝える。

（そういえばお好み焼きなんてずいぶん食べてないわね）

「どうかな？」
「そうね、そうしましょうか」
「やった！」

　久しぶりに食べるのも悪くない。
　そう思いながら紫は身支度を済ませると、嬉しそうな顔をする蒼と一緒に家を出た。

　向かう先は近所にあるお好み焼きの店・『うさぎ屋』。店内に入り、店主である宇佐見満月にお久しぶりと挨拶してから、空いている席を探す。

「紫ちゃん！」

　突然声を掛けられ、紫は声のほうを向いた。

「久保田先生、お久しぶりです」

　紫は声の主が寝子島高校の教師・久保田美和だと分かると丁寧に挨拶を返した。

（……先生？）

　２人が会話を交わすなか、蒼はこの人が誰なのだろうという興味が沸いた。紫は蒼の様子に気づくと、簡単に美和先生のことを伝えた。紫によると、美和先生は彼女が通っていた高校の先生で、以前先生の女子力アップ作戦に協力していたらしい。

（話に聞いていたけど、可愛らしい人じゃない）

　蒼は美和先生を見ながら素直にそう感じた。頃合をみて蒼も先生に挨拶をする。

「仙藤蒼です。来年、寝子高を受験するのでよろしくお願いします」

　こちらこそよろしくね、と美和先生は笑顔で答えた。　挨拶を終えたところで先生と一緒のテーブル席に姉妹揃って座った。
　メニューを見て紫はエビ玉と麦茶を、蒼はニャンタのオレンジ味とミックス玉、トッピングに天かすとチーズを注文。それから美和先生と紫は学校生活などの近況をお互いに話し始めた。途中から蒼の話になり、中学校のことなどを話す。
　時々蒼があることないこと話すので、紫はハラハラしっぱなしだった。

「じつはこの間なんてー」
「ちょっと、蒼」
「えーいいじゃん」

　紫は蒼を窘めるが、調子に乗った蒼と先生が盛り上がったりして肩をすくめる。そうしているうちに注文したものが３人のもとに届けられた。
　２人はそれぞれの生地を鉄板に広げる。エビ玉をヘラで伸ばし、手際よく焼き上げる紫。それに対してミックス玉を危なっかしい手つきで返そうとする蒼。紫がサポートしながら、どうにか美味しく焼くことができた。あとはそれに天かすとチーズをまぶしたら完成。
　できあがったお好み焼きを口に運び、その味を堪能する。
　それからも色々なことを話しながら、３人は楽しい時間を店を出るまで過ごした。

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