『うさぎ屋』でお好み焼き食べよう！｜リアクション

『うさぎ屋』でお好み焼き食べよう！

●香りに誘われて

　旧市街。時刻は正午を少し過ぎた頃。御巫時子は旧市街を散歩していた。
　太陽が見えているものの雲が程よく掛かっているので、日差しがそれほど強くなく散歩日和といえる。

「お腹が空いてきましたね……どこで食べましょうか……」

　空腹を感じて周囲に飲食店やフードコートが無いか見回す。すると見慣れた人物が目に入った。寝子島高校の教師、五十嵐尚輝先生だ。どこかへ向かっているようで、あっちこっちに視線をさ迷わせている。やがて一軒の店の前で立ち止まると、そのまま入店した。

（先生が入ったのは……お好み焼きの店・『うさぎ屋』？）

　時子は食事処に先生が入ったことがとても嬉しかった。そして先生に続くように時子も入店する。
　店に入ると、先生が店員にカウンター席かテーブル席か尋ねられていた。しかし先生はどうしたらいいのか分からないようで、困っている様子。

「尚輝先生！」

　時子は助け舟を出そうと後ろから声を掛けた。先生は振り向き、すぐに時子だと気づいた。店員に知り合いだと説明して、テーブル席へ向かった。この店は自分で焼きたい場合はテーブル席のほうがよさそうだ。先生と同じテーブルに腰を落ち着ける。
　メニューを見ながら、どれにしようかと迷う。

「私はミックス玉にします。先生はどうしますか？」

　時子の問いかけに頭を悩ませる先生。どうやらここに初めて来たらしく、戸惑っているらしい。２人でメニューを眺めながら、豚玉にすることにした。
　注文を済ませると時子が２人分の麦茶を取ってくる。先生は礼を言うとそれを受け取り、一口飲んだ。

「お好み焼きは作ったことがあります。ひっくり返すのが上手になったんですよ」

　胸を張る時子に先生は感心したように首を縦に振った。生地が２人の席に届けられると、時子は空気が入るようにふわっと軽く混ぜてから鉄板に流す。
　流し込んだところから円状に広がっていくのを整えて豚バラを乗せる。そして頃合をみてひっくり返す。鉄板の上で綺麗に半回転すると、生地は元あった場所へ戻った。

「美味しそうですね……」

　ほどよい焼き色がついており、もう片面が焼きあがるのが待ち遠しい。豚肉が焼けたらもう一度ひっくり返してソースとマヨネーズを飾るように掛ける。その上に花かつおをふりかけたらできあがり。
　先生も時子の焼く様子を真似るように生地を鉄板に流す。しかし勢いよく流れてしまい、生地が自由に広がっていく。時子は焦る先生にアドバイスしながら２人で形を整えていく。それから豚肉を乗せて、ひっくり返して、できあがり。
　危なっかしい手つきだったが、時子のサポートもあって無事にひっくり返すことが出来た。

「いただきます……」

　２人はそれぞれのお好み焼きにヘラをのばす。先生は熱いのをどうにか冷ましながら口に運ぶ。

「尚輝先生、ミックスも美味しいですよ」

　時子は自分のミックス玉をカットして先生に渡すと、先生も同じように時子に自分の豚玉を渡す。

（先生と昼食をご一緒するのも、先生が昼食をとる事を忘れられてないのも、嬉しいですね）

　お好み焼きを食べながらこれからの予定や学校のことなどを話す。すべて食べ終わるまで楽しい時間は続いた。

「ごちそうさまでした……」

　時子はお腹も心も満たされ、先生とともに店を後にした。

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