【星幽塔】第八階層　ヒカリグモの糸～ドレス作るよ！｜リアクション

【星幽塔】第八階層　ヒカリグモの糸～ドレス作るよ！

☆ヒカリグモの洞窟

　やがて、夏朝と修は洞窟にたどり着いた。
「盗賊の姿はないけど……奥に入ったのかな？」
　木陰に隠れて様子を見ながら夏朝と修は弁当を分け合って食べていた。
　お握りに唐揚、卵焼きもある。
　その間に皆も追いついてきて腹ごしらえをする。
「出てくる気配がないな。洞窟に入ってみよう」
　刀の言葉に、一行は動き出す。
　壁や天井・地面や音等に警戒しつつ、夏朝は進む。
　刀もいつでもろっこんで加速できるよう備えていた。
　盗人の光の勘も頼りに罠探しするが、今のところ大きな罠は見つかっていなかった。
（でも油断はできない）
　マグライトで洞窟の奥を調査していた修が声を上げる。
「ヒカリグモの巣だ」
　洞窟の岩陰に張られた巣の糸が光った。
「粘性があると織物に不向きだが、捕縛方法は何だ？　麻痺成分とか……」
　縦糸と横糸、各々の粘度強度を確認する。
「ヒカリグモの糸……つやつやしてるね」
　夏朝が布袋とプラスチック容器を取り出した。
「横糸がねばねばしてるが、縦糸に粘りはないな。光る理由は餌誘導のためか？」
　修は盗賊のことを忘れたように調査に集中してしまっている。
「織機で使うのは縦糸かな」
　夏朝は縦糸を布袋に、ねばねば横糸はプラスチック容器に回収する。
「どうもここには、盗賊はいないようだな」
　刀は洞窟の奥までチェックしたが、人の姿はなかった。
　だが、盗賊のものらしき食べかすや空き瓶が転がっている。

「ヒカリグモ、見つけた！」　　
　後からやってきたアリスは、岩陰に隠れたヒカリグモの姿を見つけた。
「えっ？」
　ひょいと覗き込んだ甘桃だが。
　毛むくじゃらの大きな蜘蛛の姿に悲鳴を上げた。
「……ぎゃーっ！　クモさんおっきい！　やっぱりムリー！」
　半ベソをかいて逃げ、レオンの後ろに隠れた。
　甘桃はかわいいもの好きだ。かわいくないと思ったものはとことん嫌ってしまう。
「へえ、これがヒカリグモか。なんか愛嬌のある顔してんなぁ」
　ちょっと驚いたレオンだが、ヒカリグモの丸い目に可愛らしさを感じる。
　驚いたようにヒカリグモは物陰に隠れようとするが、動きが鈍い。
「ヒカリグモ、かわいいですね」
　野宿にも慣れていて生き物はなんでも大丈夫なペルラもにっこりと微笑んだが。
「まず怪我などしていないか確認しましょう」
　グレイスの声に、ペルラは次の瞬間真剣な顔になった。
「そういえば動きが……この子、傷ついているかも」
　良く見ればヒカリグモの背中には刀傷があった。
「癒しの力はないけれど、傷を洗ったり包帯を巻いたり応急処置位は。冒険者ですもの」
　そう言って包帯を取り出そうとするグレイスにペルラは言う。
「盗賊の仕業でしょうか。痛めつけて糸だけ取ってさようならは、あまりにも無責任だと思います。癒しの力、私が使います」　
　ペルラはウッドシールドから癒しの力を使い、蜘蛛の傷を癒す。
　グレイスは労わるように蜘蛛の体を撫で、落ち着かせた。
　ヒカリグモは嬉しそうに、グレイスに身をすり寄せた。
「かなり知能も発達しているのでしょうか？　人懐っこいですね」
　ペルラもヒカリグモを撫でたり、毛づくろいをしたりする。
　落ち着いたところを見計らって、グレイスが話しかけた。
「糸を少し譲って欲しいので、不要な巣があれば教えて欲しいのです」
　ヒカリグモは、わかったというように動き出し、空の巣を教えてくれた。

「こっちの誰もいない巣から糸もらうからね」
　甘桃はしゃがんでそっと糸を集め始める。
「綺麗ね……」
　桜もヒカリグモの糸を集める。
　手芸が得意な桜としては、ヒカリグモの糸は服だけでなくアクセサリーにも使えるのではないかと思える。
　そのころ亮は入り口の周囲を警戒していた。
（可能な限り蜘蛛には近づかないようにしよう）
　

このページにイラストを設定する