【星幽塔】第八階層　ヒカリグモの糸～ドレス作るよ！｜リアクション

【星幽塔】第八階層　ヒカリグモの糸～ドレス作るよ！

☆まずは聞き込み

「ヒカリグモの糸で作るドレス、良いなぁ……！」
　恵御納夏朝は、洋品店に飾られたドレスをうっとりと眺めていた。
　つややかでふわっとした美しい布地は、どこか猫さんの毛並みを連想させる。
「そのヒカリグモの糸を、盗賊が狙っているそうだ」
　依頼主である店主に話を聞いた八神修が説明する。
「盗賊が、ヒカリグモを……？」
　無表情でぼんやりしているように見える夏朝の目に光が灯った。
「ヒカリグモの糸？　独り占めはダメだよ、フォルカ」
　酒場の女の子アリス・ミーティアは、盗賊であるキツネ獣人のフォルカ・ヴィクスンに冗談めかして言う。
　アリスとフォルカは一緒に宝を探しに行く仲だ。
「あたしじゃないよ、近頃森に住み着いた盗賊団がヒカリグモの糸を独占しようとしてるんだ」
　フォルカは抜け目ない盗賊だが、一人では他の盗賊たちにかなわない。
　店の依頼に応じて仲間と共に糸を手に入れるほうが得策と判断したのだろう。

「ヒカリグモを傷つけて糸を無理やり奪う……そのような狼藉、見過すわけにはいきませんわ」　
　そう憤るグレイス・ミットフォードは、凛とした雰囲気の女剣士だった。
「綺麗な服は確かに魅力的ですが、酷いやり方で糸を奪おうなんて許せませんわ！　ヒカリグモは私が守ります！」
「ヒカリグモ、盗賊に狙われているんですね。私にしてあげられることはないでしょうか……？」
　博愛主義のペルラ・サナーレの羽耳が動いた。
　腕にはスターサファイアに１対の翼の装飾があしらわれた、幅が広めのブレスレットをつけている。
「ふーん、なるほど。つまりそのヒカリグモって生き物の糸をとってきて、ついでに盗賊連中もどうにかしてくればいいんだな」
　滝原レオンが、鋭い眼光を店主に向けた。
「はい、糸を取ってきていただければもちろん皆さんにも差し上げますので」
　およそ荒事に向きそうにない風情の店主の言葉に、レオンは頷いて言った。
「俺も服飾専攻だし放ってはおけない、よければ手伝わせて欲しい」
「糸とってくる、で、今の服に似合うマント作るんだ！」
　目を輝かせる小学一年生の百岳甘桃は、ふりふりの魔女服に身を包んでいた。
「今のわたしはだいまほーつかい。絵本の魔女さんだってクモさんと一緒にいるんだから、だいまほーつかい甘桃ちゃんが怖がることなんてことないもん」
（こんな小さな子でも蜘蛛平気なのか……）
　そんなことを思いながら、新田亮がフォルカに尋ねる。
「まずは盗賊の情報を集めよう。盗賊の人数は？」
　亮の問いにフォルカは答えた。
「わからないけど、少なくとも３人は動いてるはずだよ。アジトにはもっといるだろうね」
「使う技や罠の事も知りたい」
「技までは知らない。罠は綱とか岩、落とし穴とかって聞いたよ。命に関わるほどのもんじゃないと思うけど……油断は禁物だ」
「とーぞくさんが岩を置いてとおせんぼしてても、ろっこんで小さくすれば大丈夫。ふふーん♪」
　だいまほーつかい（？）甘桃のろっこんは『ちっちゃく&おっきく！』。触れた物をイメージしたサイズに変えることができるのだ。
「糸は希少高価なので『ねこよろず』で扱うには不向きだなあ」
　修は残念そうだが、店主に尋ねる。
「地図はあるかな？」
「おおまかなものはありますが、巣のある洞窟は書かれていません。職人が糸を取りに行くための道標がありますので、それを辿って下さい」
　店主の説明に、御剣刀が頷いた。
「盗賊団もそれを目印にしているなら、それを辿れば盗賊団とも遭遇するな」
　被害が出ているなら放っておけないな、と考えている刀の手には日本刀があった。
「……僕も向かうよ。罠とかあれば解除する！」
　夏朝の言葉に力がこもった。　

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