猫耳にゃん！｜リアクション

猫耳にゃん！

　鬼河内萌はご機嫌で下校していた。今日は首尾良く想い人野菜原ユウを捕まえられたからである。

（むふふ～、ユウくんと一緒☆）
　萌はにこにこと隣を歩くユウを見上げる。自分の胸がどんなにチッパイだからって、けしてめげない明るい萌だが、ユウがいればもっともっと元気になる。そう、ユウくんといると本当に楽しい。尻尾がピンと立っちゃうくらい。
（え？　尻尾？）
　謎のキーワードが出てきて萌は戸惑う。だって、ユウくんのお尻の尻尾はゆらり大きく揺れていて。……ええ？！　ユウくん尻尾生えてる？！
「ユウくん？！」
　思わず声が裏返る。ハッと上を見ると、さっきまでは普通だった彼の頭に、ぴょこりと猫耳が生えていた。
「何だよ鬼河内……ってお前どうしたにゃん？！」
　振り向いたユウが、バババッと毛を逆立たせる。
（え？　何？　嘘、まさか……）
　驚愕のユウの視線に萌がぱっと頭を押さえる。そこにはもふもふっとした感触が。後ろを見れば茶色の尻尾がぴょこぴょこしてる。
　萌とユウはお互いを指して叫んだ。
「「耳と尻尾が生えてるにゃんーーーっ！」」

「にゃんでこんな時にいきなり……」
　萌はベンチに座り、肩を落とした。突然の変身に慌てた２人は、とりあえず人目につかない方がいいだろうと、近くの公園に避難してきたのだ。
「なんでだろうにゃ。でも、全部猫になる感じじゃないみたいだけどにゃ。……あー、にゃーにゃーめんどくせーにゃん！」
　萌の隣に座り、ユウはにゃーっ！　と天に叫ぶ。その様子も可愛いにゃんなんて思っていた萌。突然何だか心と体がむずむずしてきた。
（え、こ、これはもしかして……発情期では？！）
　萌は胸を抱きかかえるようにして（失礼、抱きかかえるほどありませんでした）身悶える。なるほど、気に入ったオスが近くにいればそれはなるかもしれないが、萌さん割といつでもユウにはつじょ……げふんげふん。
　ともかく。ユウにすりすり＆ゴロゴロしたくなった萌は、欲求にとっても素直になる事に決めた。……だって、本能に勝てる訳ないもん☆
「ユウくん……」
　熱のこもった声で囁くと、萌は尻尾をピンとさせながら、すりりとユウの首筋に頬を寄せた。

「ど、どうしたにゃん鬼河内？！」
　慌てるユウに萌はチッパイ胸を押し当て、更に擦り寄った。
「神魂のせいで、ボク我慢できないにゃん……」
　ゴロゴロすりすり。萌は目一杯ユウに甘える。
「神魂……くそぅ、また神魂にゃん！」
　嘆くユウを尻目に、萌はコロンと彼の膝の上で横になった。
「鬼河内？！」
「だってボク猫だにゃん。猫は膝で丸くなるのが当たり前にゃん」
「そうにゃのか？！」
「そうにゃのだ☆」
　にゃにゃ～んとユウの膝で甘える萌。傍目にはただのバカップルにしか見えない。
（これ、ちょっといい雰囲気かも？）
　気を良くした萌は体を起こすとペロリと可愛らしい舌を出した。
「ユウくん、毛繕いしてあげるにゃん☆　どこペロペロして欲しいにゃん？」
「毛繕いするほど生えてにゃい！！」
　にゃいにゃいと騒がしい猫達。さあ、萌のグルーミング成功なるか？！　という時、彼らの耳にパワーワードが飛び込んできた。

「さあ、おやつの時間。『ニャオチウル』だよ～」

（（ニ　ャ　オ　チ　ウ　ル！！！））
　全猫が飛びつく魅惑のおやつニャオチウル。見れば向かいのベンチで女の子が飼い猫に与えている。萌とユウは顔を見合わせた。
「お、美味しそうだにゃユウくん……」
「バ、バカ俺達人間だにゃん……」
「でも耳も尻尾もあるし、この際もう猫でいいんじゃにゃいかにゃ」
「やめろ鬼河内……俺に最後の理性を捨てさせるにゃん……」

　だらだらと涎を流しながらニャオチウルを食べる猫を見つめる２人。
　―――大丈夫、ニャオチウルは人間が食べても無害だよ☆

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