せんせいといっしょ：泉先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：泉先生編

　彫刻展示コーナーの一角。寝子島の知らない一面も見てみよう、とやって来た伊賀解理は巨大なサンマさん像に目が釘付けになっていた。彼女の故郷にも木彫りの熊の像があるが、それは鮭を口に咥えている。ならばサンマさんは何を咥えているんだろう、と思って口元を見ていると……どうみても小さなサンマさんのようにしか見えなかった。
　ボケ属性を自覚する彼女が思わず突っ込もうとしたその矢先。『日向のどか』という女性が作成した彫刻が目に入った。それは幾つもの猫の彫刻であり、タイトルもそのまま『木彫りの猫』である。
（あっ……手が込んでるんだなぁ）
　と解理が息を飲んだのは多種多様な姿をした猫たち。口に咥えている物も猫じゃらしにねずみ、ちいさなサンマさん、等と種類が豊富な上、猫自体も彫り加減に３パターンあり、それだけでも見ていて飽きない。大きさも掌サイズから普通のサイズまで、と充実している。
（猫同士の絡みも充実している。あっちはじゃれあう寸前で、こっちは眠りそう……）
　なんて和みながら見渡していた彼女だがある事に気づく。それは、あまりにも数が多い、という事。よく見たら小さなフロア一杯に敷き詰めてあるようでまるで猫屋敷である。
「って、がんばりすぎだよこの作者！　どんだけ猫好きなんだっ！！」
「まぁ、猫好きが高じてこの島に渡った人だからな」
　と傍らにいた竜次がうんうん頷いている。頭痛を覚えそうな解理に竜次は「こっちはどうだ？」と隣のフロアへ彼女を連れて行ってくれた。そこで待っていたのは……大小様々なサンマさん。しかも口には大根やら猫やら、人間やら……と色んな物を咥えている。そして、タイトルもそのまんま『木彫りのサンマさん』だったりする。
「わぁ、こっちは七輪咥えてますねー♪　それでいて色んな動きが見えそう……ってさっきの作品群とコンセプト同じじゃねーかっ！！」
　ボケ属性を自覚する彼女が思わず突っ込む姿に、竜次は少し苦笑している。そして、作者を見てみれば『日向のどか』と記されていた。
（同じ作者だったーっ！）
　頭を抱えているその横で、竜次は「それが日向の持ち味だよ」と大人の笑顔で頷いた。後から聞いた話だが、この作者は竜次の教え子であり、在学中からこんな感じだったとの事。それを聞いた解理は思わずその場に突っ伏しそうになった。