スイカ・ザ・マッスル！｜リアクション

スイカ・ザ・マッスル！

　続いての第２試合。
　コートに入るのはサキリと羽生碧南。
　彼女自身は基本的にはそれほど気合を入れずに遊ぶつもりでビーチバレーに参加してみたものの、いざコートに立ってみたら、そこはバスケ部のレギュラー。

「なんだか、燃えてきた……！」
　コートに立つとどうしても気合がみなぎるようで、『戦う女』モードがスイッチオン。
　先攻はスイカ男たち。
　強烈なサーブを羽生が拾うと、サキリがタイミングよくトスを上げる。
「行けるよ、羽生！」
「任せて、サキリくん！」
　級友コンビの息の合った連携と、羽生の180cmの高身長から叩き込まれる弾丸アタックが、スイカ男たちのコートの砂浜に突き刺さる！
「よし！　決まった！」
「さすがだ、羽生。頼りになるよ」
「サキリくんもナイストス！」
　２人は仲良くハイタッチ。
「それにしても、女の子のサキリくんって……」
「ふふ、信じられないかい？」
　高身長少女２人がコートの中でキャッキャウフフとじゃれ合う姿に、スイカ男たちは思わず熱視線を向けてしまう。
「なんか、神魂って凄いんだね……」
　もにょもにょする羽生に、サキリは首を傾げる。
　羽生は首をぶんぶんと振ると、両手で顔を軽く叩いて気合を入れ直した
「ううん、いまは試合に集中しなきゃ。ごめんね、スイカ男さんたち。コートの中では容赦しないよ。たとえ余命僅かなあなたたちでも、顔面にボールを当てて砕く勢いで私は戦う！」
「ビーチバレーに慈悲はない。覚悟するんだ」
「「ヒィッ……！」」
　級友コンビの圧倒的戦闘オーラに、初っ端から気圧されるスイカ男コンビ。
　それでも彼らは、何とか級友コンビに喰らい付いてゆく。
「イヤーッ！！」
　シャウトと共にサキリはカミソリめいたレシーブやアタックを砂浜の上で披露！
　瞬発力を生かした刃物の如きキレあるボールは、スイカ男の本能が危険と判断したのか手を出せずにいた。
「コワイ！　なんだ、あの黒い水着の少女のボールは！？」
「やべーぞ、アレに触れたら、俺達の身体は真っ二つになりかねねぇぜ……！」
　もはや試合展開は一方的であった。
　それでも、最後まで全力で級友コンビはスイカ男たちを轟沈させた。
　獅子は兎を狩るときも常に全力なのだ。
「ふう……、いい汗かいた。スイカたち、腰が引けてるよ、しっかりしないと」
「サキリくんの言う通りだよ。もっとガッツを見せてほしかったなぁ？」
「「勘弁してつかぁさい……」」
　スイカ男は砂浜でガクガクと震えながら海の家に逃げ帰っていった。
「「うわぁ～ん、月詠ねえさ～ん！！　アリサちゅわ～ん！！」」
　屈強な肉体が幼児のように２人の女性に甘えるという、カオスな光景が広がっていた。
　だがサキリは、遠くでスマートフォン片手に突っ立っている桜庭円をじっと眺めていた。
「どうしたの？　サキリくん？　さっきから難しい顔をして？」
「ああ、女体化するとさ、思ったように身体が反応できないなって感じて……」
　すると、サキリは自身のバストを両手で軽く揉みしだいてみせた。
「やっぱりこれが原因だなって。結構重いんだよ、これ。あそこにいる桜庭みたいに、僕もスレンダーな体型だったら良かったのに」
「うーん、なんだか贅沢な悩みだね……」
　羽生は苦笑いすることしかできずにいた。