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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
『柊の湯』、マナーを守って ご利用下さい！
マリエッタや理紗子が『柊の湯』を訪れたその翌日。
『柊の湯』へやって来た龍目 豪はその入り口の前で足を止め、看板を見上げた。
「ここ、九夜山の帰りに入れるんで気に入ってるんだよな♪」
時刻は夜の七時半過ぎだった。本格的な夏までもう少し、日が落ちれば肌寒いくらい。涼やかな風と虫の声が聞こえる。
と、
「ん？ なんだか騒がしいな……」
他の客がいようとも、あんなに激しい水音がするとは思えない。豪は中へ入ってみることにした。
『柊の湯』にていつもの店番をしていた柊真斗は不意に出た欠伸を手で押さえた。接客係だが、今は客が途切れてしまっている。
「少しだけ読書でもしますか」
真斗はお客の気配がないことを確認して、番台のイスに座り、持って来ていた本を開くことにした。
しかし、足湯場の方から何やら物音が聞こえたような。
慌てて本を閉じ、そちらへ向かう。
「これは」
キツネらしき尻尾を生やした小さな女の子達が、楽しそうに足湯場を走り回っていたのだ。お湯をかけあったり、飛び込んだり。やりたい放題だ。
「いつの間に……この子達はいたのでしょうか……？」
真斗は呆然とした。
その日、八神 修は『柊の湯』へ向かっていた。そこにやって来るという噂の虎猫、「虎丸」に会えるかと訪れたのだ。
そのため、猫じゃらしとＰＶＣボールを持参している。
期待に心が踊る。
しかし、入り口の前で気づいた。湯場の方が騒がしい。
「子供の声、か？」
子供の集団でも入りに来ているのだろうか。
「行ってみるか」
お湯に飛び込んだり、お湯をかけあったり、腰を掛ける部分で追いかけっこをしたり。
我に返った真斗は考える。
「と、とにかく止めないといけませんね。ええっと」
一人でできるだろうか。しかし、今は他の客はいない。と、後ろから足音がした。
「おいおい、尻尾が見えてるぞ」
真斗の隣に並んだのは豪だった。様子がおかしいことに気づいて、入って来たのだ。
「あ、いらっしゃいませ」
「何があったんだ？」
「……僕もわかりません」
豪は少し考えて、
「とにかく、止めさせて、足湯の入り方をレクチャーしてやろう」
「そ……そうですね」
真斗は、はっとした。女の子達は思い思いに駆け回っているが、何か動作をするたびに他の子達へ視線を向けていることに気づいたのだ。誰かの指示を仰いでるようだ。
「もしかして、リーダーがいるのかもしれないですね」
「リーダー？」
「なんとなく、あの子達の動きに法則性があるような気がします」
「言われてみれば」
「そうだ。僕が気を引きます。その間に見つけましょう」
「どうするんだ？」
「温泉卵を使います。取ってきます」
「わかった。その間に俺もできることをする」
「はい」
真斗はこの場を豪に任せ、温泉卵を売っている別の入り口へと向かう。
真斗が行ってしまうと、豪は改めて女の子達へ視線を向けた。
思いっきり息を吸い込んで、
「こーら！」
豪がそう叫ぶと、女の子達は目を丸くして動きを止めた。
「ここは、そうやって遊ぶところじゃないんだぞ！」
しかし、
「何？ あのお兄ちゃん」
「知らなーい」
彼女達はすぐに遊びを再開してしまう。
「やっぱり言葉だけじゃ無理か」
「ねえ、ねえ」
視線を落とすと、二人の女の子が不思議そうにこちらを見上げていたのだ。
「お？」
「だったらお兄ちゃんはどうやって遊ぶの？」
「お湯でバシャバシャするの楽しいのにね？」
どうやらこの二人だけ、豪の言葉に興味を持ったようだ。
豪はしゃがみ込んで二人の頭を撫でた。
「いいか？ いろんな人たちが来る場所では、騒がないこと。静かにのんびりしたい人だっているんだ。他のお客さんに迷惑かけると、出入り禁止になっちまうかもしれねえ。どうせならみんなで楽しみたいだろ？」
「ここへ、来られなくなっちゃうの？」
「ああ」
女の子達は不安げにお互いの顔を見合わせた。
「ちゃんとマナーを守ればいつ来てもいいんだぞ？」
豪はそう言って、立ち上がる。
「だから、ここで遊ぶのは」
「えいっ」
唐突に腕に飛びつかれたのだ。
「わっと！？」
「あたしもあたしもー」
もう一人の子ももう一方の腕にしがみついてきた。
「待て待て、腕が千切れる！」
「ブランコやって！」
「はぁ？ ……し、仕方ない」
腕の力だけで、女の子達を持ち上げ、どうにか揺らす。
「うぐっ」
「わーいっ」
「もっと、揺らして！」
「無茶言うなって……おっと！？」
背後に気配が。どうやら人が入ってきたようだ。
まずい。しっぽはファッションだとでも言って誤魔化すか。
そんなことを考えたのだが。
『柊の湯』へやって来た龍目 豪はその入り口の前で足を止め、看板を見上げた。
「ここ、九夜山の帰りに入れるんで気に入ってるんだよな♪」
時刻は夜の七時半過ぎだった。本格的な夏までもう少し、日が落ちれば肌寒いくらい。涼やかな風と虫の声が聞こえる。
と、
「ん？ なんだか騒がしいな……」
他の客がいようとも、あんなに激しい水音がするとは思えない。豪は中へ入ってみることにした。
『柊の湯』にていつもの店番をしていた柊真斗は不意に出た欠伸を手で押さえた。接客係だが、今は客が途切れてしまっている。
「少しだけ読書でもしますか」
真斗はお客の気配がないことを確認して、番台のイスに座り、持って来ていた本を開くことにした。
しかし、足湯場の方から何やら物音が聞こえたような。
慌てて本を閉じ、そちらへ向かう。
「これは」
キツネらしき尻尾を生やした小さな女の子達が、楽しそうに足湯場を走り回っていたのだ。お湯をかけあったり、飛び込んだり。やりたい放題だ。
「いつの間に……この子達はいたのでしょうか……？」
真斗は呆然とした。
その日、八神 修は『柊の湯』へ向かっていた。そこにやって来るという噂の虎猫、「虎丸」に会えるかと訪れたのだ。
そのため、猫じゃらしとＰＶＣボールを持参している。
期待に心が踊る。
しかし、入り口の前で気づいた。湯場の方が騒がしい。
「子供の声、か？」
子供の集団でも入りに来ているのだろうか。
「行ってみるか」
お湯に飛び込んだり、お湯をかけあったり、腰を掛ける部分で追いかけっこをしたり。
我に返った真斗は考える。
「と、とにかく止めないといけませんね。ええっと」
一人でできるだろうか。しかし、今は他の客はいない。と、後ろから足音がした。
「おいおい、尻尾が見えてるぞ」
真斗の隣に並んだのは豪だった。様子がおかしいことに気づいて、入って来たのだ。
「あ、いらっしゃいませ」
「何があったんだ？」
「……僕もわかりません」
豪は少し考えて、
「とにかく、止めさせて、足湯の入り方をレクチャーしてやろう」
「そ……そうですね」
真斗は、はっとした。女の子達は思い思いに駆け回っているが、何か動作をするたびに他の子達へ視線を向けていることに気づいたのだ。誰かの指示を仰いでるようだ。
「もしかして、リーダーがいるのかもしれないですね」
「リーダー？」
「なんとなく、あの子達の動きに法則性があるような気がします」
「言われてみれば」
「そうだ。僕が気を引きます。その間に見つけましょう」
「どうするんだ？」
「温泉卵を使います。取ってきます」
「わかった。その間に俺もできることをする」
「はい」
真斗はこの場を豪に任せ、温泉卵を売っている別の入り口へと向かう。
真斗が行ってしまうと、豪は改めて女の子達へ視線を向けた。
思いっきり息を吸い込んで、
「こーら！」
豪がそう叫ぶと、女の子達は目を丸くして動きを止めた。
「ここは、そうやって遊ぶところじゃないんだぞ！」
しかし、
「何？ あのお兄ちゃん」
「知らなーい」
彼女達はすぐに遊びを再開してしまう。
「やっぱり言葉だけじゃ無理か」
「ねえ、ねえ」
視線を落とすと、二人の女の子が不思議そうにこちらを見上げていたのだ。
「お？」
「だったらお兄ちゃんはどうやって遊ぶの？」
「お湯でバシャバシャするの楽しいのにね？」
どうやらこの二人だけ、豪の言葉に興味を持ったようだ。
豪はしゃがみ込んで二人の頭を撫でた。
「いいか？ いろんな人たちが来る場所では、騒がないこと。静かにのんびりしたい人だっているんだ。他のお客さんに迷惑かけると、出入り禁止になっちまうかもしれねえ。どうせならみんなで楽しみたいだろ？」
「ここへ、来られなくなっちゃうの？」
「ああ」
女の子達は不安げにお互いの顔を見合わせた。
「ちゃんとマナーを守ればいつ来てもいいんだぞ？」
豪はそう言って、立ち上がる。
「だから、ここで遊ぶのは」
「えいっ」
唐突に腕に飛びつかれたのだ。
「わっと！？」
「あたしもあたしもー」
もう一人の子ももう一方の腕にしがみついてきた。
「待て待て、腕が千切れる！」
「ブランコやって！」
「はぁ？ ……し、仕方ない」
腕の力だけで、女の子達を持ち上げ、どうにか揺らす。
「うぐっ」
「わーいっ」
「もっと、揺らして！」
「無茶言うなって……おっと！？」
背後に気配が。どうやら人が入ってきたようだ。
まずい。しっぽはファッションだとでも言って誤魔化すか。
そんなことを考えたのだが。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2018年08月17日
- 参加申し込みの期限
-
- 2018年08月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2018年08月24日 11時00分
