輝け！写真館 Recollection｜リアクション

輝け！写真館 Recollection

■お陰様です！
　どんよりとした曇り空。
　写真館 Recollectionの窓から、環的子が外を眺めていた。
（雨、降りそうだな……）
　的子の淡い水色の瞳は不安そうに揺れる。
　明るく前向きに、そう思いながら的子は掃除を行っていた、が。
「あ、降ってきちゃった」
　思わず呟く。窓ガラスにはコツコツと水滴が当たり始めていた。
「幽さん、大丈夫でしょうか……」
　的子と同じく、写真館にアルバイトに来ていた御巫時子が的子の隣に並び、外を見やる。
　たった少しの間なのに、窓を叩いていた雨の勢いはどんどん強まっていく。
「ちょっとあたし、幽くん迎えに行ってくるわ」
　写真館の女店主・小田切理子が傘を手に持つ、と。
「あ、小田切さん、紗雪さん帰ってきましたよ」
　的子の言葉に本当？と理子が玄関を見れば、勢いよく黒髪の少年――紗雪幽が写真館へと飛び込んできた。

「うっわ、やっぱ降水確率40%は侮れないっすね！」
　チラシの束を大事そうに胸に抱え。幽が苦笑する。
「幽さん、チラシ配りお疲れ様です……」
　時子がタオルを片手に幽に近寄れば
「時子先輩、ありがとうございまーす！」
　と、幽はタオルを受け取って、やや濡れてしまった身を拭う。
「チラシ配りありがとうねー。濡れちゃったよね、あ！着替え貸すわよ？王子服とかロンパースとか選り取り見取りよ！」
「理子さん何すか、その微妙衣装チョイス」　
　苦笑する幽。その時、店の電話が鳴った。
「はい、写真館リコレクションです」
　的子が受話器を取った。雨も降ってきたことだし、またキャンセルの電話か……と幽や時子は一瞬頭をよぎりつつも。
「あ！理子さん聞いてくださーい！チラシ配ってきて、反応良かったんすよ！」
　ニヤリ、と幽が笑みが見せる。
「え？本当に？」
　理子が訊き返すが、それと同時に
「ご予約、ですね。かしこまりました！」
　的子の表情が一気に明るくなった。
　明るい声へと変わる的子に、時子も思わず笑みが零れた。予約状況をそっと的子に見せる。
「……はい。……かしこまりました。ご希望の時間なら、空いております」
　的子がメモを書くのを時子と理子が覗き込む。
「……ふっふっふ。幽くんや、給料泥棒する余裕はないかもしれないわよ？」
「マジっすか？望むところっすよ！」
　幽がググッとガッツポーズをすれば、時子は穏やかな笑みを見せ。
「『忙しすぎる位が肌に合う』とおっしゃってましたものね……」
「あら？そうなの？それじゃあお言葉に甘えちゃおうかしら！」
　理子の声と共に、的子の明るい声が響き。
「ご来店、お待ちしております」
　安堵に胸を撫で下ろしながら、的子は電話を切る。
「大口のご予約、でした！」

　嬉しそうな笑みを見せる的子。
　理子は詳細を聞き、改めてカレンダーを見る。
「この日は大口の予約が入ったし、あ、こっちの日も知り合いのツテで仕事があるのよね。でもって……」
「……忙しくなりそっすね……」
「でも、お客様がいらしてくださるのは嬉しいです……」
　遠い目をし出す幽に、時子は柔らかな輝きを放つ黒い瞳をそっと細め。
　的子もキュッと拳を握り
（張り切っていっぱい頑張るぞ）
　と瞳をキラキラと輝かせた。そんな3人の姿に理子も
「よぉっし！雨にも負けず！風にも負けず！張り切ってお仕事するわよー！」
「おー！」
　幽、時子、的子の明るい声が重なる。
　こうして今日も、写真館リコレクションは営業を開始するのだった。

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