【プール開き】ドキッ☆水着だらけのうふふのふ♪｜リアクション

【プール開き】ドキッ☆水着だらけのうふふのふ♪

　佐藤英二は、広いプールの端のコースで、のんびりまったり水と戯れていた。
　日光で温まっているとはいえ水の中は、そこそこ冷たく気持ちがいい。
「それにしても、近隣の人にもプールを開放するなんて、思い切ったことするなあ」
　くるり、ぷかぷか仰向けに浮いたまま、周囲を見回せば、敷地内はかなりフリーダム。
　あっちの端には休憩用のテントがあって、いかにも学校らしいけれど、こっち側にはジュース売りが出ていて、人気になっている。
　周囲はわいわいコースの名にふさわしく、水と遊ぶ子ら多数。
　さっきはビーチボールで遊んでいる人もいた。
　かと思えば、お立ち台があったり、ひたすら泳いでいる人がいたり。
「みんなそれぞれ楽しそうだなあ。そういえば、野々さんはいるのかな」
　英二はきょろりと首を回して、去年同じクラスだったののこを探した。
　賑やかで元気なことが大好きな子だから、ぜったいきっと、どこかにいると思ったのだ。

　――と。
「野々さん！」
　誰かの叫ぶ声と同時に、ばちゃん！　と上がる水しぶき。
　慌てた様子で、体育委員の男子生徒が駆け寄っていく。

「野々さん！？」
　英二はぷかぷか仰向けから立ち上がり、ぐんと背を伸ばして、コースの端を見た。
　すると、水の中ならにょっこりと、苦笑しているののこの顔が。
「びっくりした～。振り返ったらいきなりプールに落ちたんだもの」
「だからプールサイドは走るなって言っただろう」
　安堵と呆れが混じった顔で、男子生徒が呟く。
　しかしののこは「ごめんなさーい」と悪びれなく言いながら、すいすいと英二の方へと泳いできた。
　顔を出したままの平泳ぎ。たった今注意されたばかりというのに、その顔ははればれとした笑顔だ。
（野々さんが、水着で泳いでる……！）
　プールだから当たり前だよ！　と思う反面、ドキドキしてしまう英二・16歳。
　ののこはじいっと見つめる英二の視線に気づいても、嫌な表情ひとつせず。
　それどころか、英二の前で、底に足をついて、立ち上がった。
　肩から胸から、ころころ転がる透明な滴。
　その女性らしいまろやかなラインに、英二は頬を赤く染める。
（でも、せっかく野々さんがこんな近くにいるんだから……！）
　英二は勇気を出して、口を開いた。
「野々さん、こんにちは。プールで泳ぐのすごく心地良いよね」
「うん！　きもちーね！　私、プールってすごく好き！」
　ののこが、夏空より鮮やかな笑みで、こてりと首をかしげる。それだけで、英二の胸はどくん！　と跳ねた。
　きらきら、きらきら。水面もののこも輝いて。
「そういえば、野々さんって水泳部だったよね？　だからかな？　いつもにも増して元気そうだよ」
　こんな言葉すら、さらりと口から出てくるから不思議だ。
　英二はさらに、先を続けた。
「もし良かったら少し一緒に泳がない？」
　ののこは大きな目をぱちりと瞬いて「いいよ！」と返事をしてくれる。
「一緒に泳ぐなら６コース行く？　でも私、速く泳ぐのは苦手なんだ～」
　全然困ってない顔で、ちょっと困ったようなことを言うので、英二はふふふ、と笑ってしまった。
「そういうのは僕もあんまり得意じゃないから、のんびり泳ぐ方向の方が嬉しいな。あと水遊びとか」
「水遊び！　オッケー！」
　ののこはご機嫌に、万歳のように両手を上げた。
　濡れても立っている不思議な髪が、ひよん！　と揺れる、
「じゃあ水かけちゃおーっと！　ねえねえ、みんなもおいでよ！　いっしょにあそぼー！」
　ののこが両手ですくいあげた水が、英二の顔に、ぱしゃりとかかる。
　その間に、周囲の子らが、集まってきた。

「野々さん、お返しだよ！」

　――ぱしゃり！

「あー、かかっちゃった。えっ、なんでみんな私を狙うのー！　もう、みんなにお返しだー！　えいえいえーい！」
　開いた手のひらで水面を叩いて、ののこが声を立てて笑う。
　二人きりにはなれないけれど、ののこの笑顔はやっぱりきらきら輝いていて。
　それを見た、英二の心は、ほかほか温かくなったのでありました。