【プール開き】ドキッ☆水着だらけのうふふのふ♪｜リアクション

【プール開き】ドキッ☆水着だらけのうふふのふ♪

　元気なイエロー！　花柄パレオが、水の中でひらひら揺れた。

「みみみん！　きょうはみんなで本体さんとたわむれるけんりをあげるよ！」
　狗民きとりは、垂れ耳わんこ＝本体さんのボール浮き輪を抱きしめて、にっこにこの笑顔で言った。
　普段は本体さんの帽子をかぶっているけれど、さすがにプールじゃそれは無理。
　だから今日は、ボール浮き輪なのである。
（でも本体さんであることには、かわりないから！）
　いつも手作り縫い縫いな本体さん。
　これをぽーんと跳ね上げれば、みんなで仲良くビーチバレーできちゃうし、きゅうっと抱きしめていれば、プールの端から端まで、楽しく行ける。
　それに。
「わわわんっ！」
　ろっこんを発動させれば、本体さんは元気に動き出すのだ。

「プールに来たから泳ごうかなあ」
「わうんっ！」
「ああ、本体さんも賛成なんだね！」
　にこり笑って返事をして、はてさて、どんな泳ぎ方をしようかなあと考える。
　ちらりと回り、特にお立ち台からのタイムアタックコースを見れば、誰かがずばばばば！　とバラフライで泳いでいた。
（バタフライもいいなあ。でもいぬみんはアーティストだから、アートになるように泳ぎましょう！）
　きらりん☆
　ぱっちり二重、いぬみんの目が輝く。
「え？　犬かきがいいですか？　本体さんがそう言うなら、チャレンジしてみましょう！」
　でも、ただの犬かきだとあんまり目立たないかもしれない。
　ということで。
「じゃあこうしましょう！　いぬみんは、さかさいぬかきをします！」
　はーい！　と元気良く手を上げて宣言し、いぬみんは、プールにちゃぽりと顔をつけた。
　緑のコンタクトをしているから、ちゃーんと水中眼鏡も忘れずに。
（これをつけると、なんだかいっぱい泳げる気がするの！）
　水の中の顔をつけて、仰向けになるのだって平気平気！
　といぬみんは、水中にもぐってころりと反転、上を向き、手足を曲げて、ばちゃばちゃばちゃ！
　――でも。

　がぼがぼがぼがぼ！

　水を蹴っているつもりが、空を蹴る足。手も同じ。
　しかも仰向けだから――。
（鼻っ！　鼻に水が入って、痛いぃ～）
　いぬみんは、足をついて立ち上がり、ううんっ！　と鼻を押さえて真っ赤になった。
　水中眼鏡を外して、涙に濡れた目を、手の甲でごしごし擦る。
　そのあとはあはあ息をつき、それでもしっかり笑顔を作った。
「欠点がありました。これだといぬみん溺れちゃいます」
　てへ！　と舌を出して子首を傾げ、いぬみんは傍らに浮いていた本体さんを引き寄せた。
「どうしようかなあ、本体さん」
「わわん、わんわんっ！」
　本体さんが、顔を寄せたいぬみんに、耳打ちをする。とはいえ声は全部、漏れ聞こえちゃっているけれど！　しかも日本語喋ってないけど！
　それでも、深い愛持ついぬみんには、しっかり伝わったようで、彼女は「わかりました！」と声を上げた。
　そして再び水中眼鏡をつけて、今度は猫のようにくるっと体を丸めて、ぴちゃぴちゃぴちゃ！

　水着のフリルがふわふわふわん！　と広がって、猫というより綺麗な金魚の尻尾みたい。
　でも周囲の人は――。
「なんかあっちで楽しそうなことやってる～、行ってみよ！」

　その声を聞き、いぬみんの手がぴくんと止まった。
（あんまり受けてないみたいですね……じゃあこうしましょう！）

　どこまでもプラス思考のいぬみんは、プールの端まで泳ぎ切ると、ざばあっと水から上がって地上に戻った。
「はわー、足があっつい！」
　焼けたコンクリートで、足の裏がやけどしそう。いぬみんはぴょんぴょんと何度か飛んだあと、右足の先を、そうっとプールの水につけた。
「ふう、気持ちいい……」
　水中を覗き込むように前傾し、右足にゆっくり体重をかけていく。
　あくまでそうっと、水面に浮かぶ妖精のように。
（それで、足が沈む前に左足を出せば……）

　がぼがぼがぼがぼ！

　想像とはまるで違う現実が、いぬみんに襲い掛かった。
　ひらひらキュートな水着を舞わせて、水の上に立てる予定だったのに。
「いぬみんは、水面には立てないみたいです……。おっかしーな？」

　水から這い上がり、見えない犬耳をしおしお下げて、いぬみんは呟く。
　でもおちこまないのが、いぬみんプリンセスのいいところ。
「わわん、わほっ！」
　ほら、本体さんだって言っている。
　頑張れいぬみん、負けるないぬみん！　いぬみん星の夏を思い出せっ！

　いぬみんの脳裏に、その映像が浮かんだかどうかは定かではないが、いぬみんは周囲を見回した。
「そういえば、いぬみん星には、大きな湖があるんですよ。知ってました？」
　誰も知るはずがないいぬみん星。まわりの主に男性陣が、ぶんぶんと首を振る。
「ここより広くって深くいんですけど、いぬみん星人は毎年、それはそれははしゃぎまわっているそうですよ。王女のいぬみんは、民のために帰らなきゃなんだけど、泳ぎがうまくないと笑われるので、ここで練習あるのみなんです！」
「わんっ、わふうっ！」
　本体さんを筆頭に、周囲からは頑張れ～と声が上がる。
「はわわ～。頑張ります。いつか、水面に立てる日が来るまで！」
　いぬみんはヒマワリみたいに元気な笑顔をみせた。

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