【プール開き】ドキッ☆水着だらけのうふふのふ♪｜リアクション

【プール開き】ドキッ☆水着だらけのうふふのふ♪

　さて、わかばの集まりである７コースで練習している女子生徒が一人。
　綾辻綾花である。
　泳げないわけではないけれど、あまり早くないし、25メートルしか体力が持たないというのが、彼女が気にしているところ。
　そしてそれでもあきらめないのが、彼女の長所である。
（だってあそこに、珪先生いますし……）
　そう、プールサイドの片隅に、大好きな早川珪先生がいるのが、見えてしまったのだ。
「よし、もう1回」
　呟き、綾花はまた、ぱちゃん！　と水を蹴った。
　腕は大きく回し、膝は曲げないように。
　クロールの練習だ。

　15分ほども、頑張ったあと。
　綾花は水から上がると、プールサイドを歩き始めた。

　すでに、バタ足を続けていた足は、怠くなっている。
「体力があまりないのでもう少し鍛えたいですね」
　綾化は、並ぶデッキチェアに腰かけて、愛用の猫タオルで、濡れた体をゆっくりと拭いた。
「先生は、どこか行っちゃったみたいですね」
　練習前に先生がいた場所を見て、ほっと息を吐く。
　今日は図書館は解放されていないはずだけど、先生だったら自由には入れるだろう。
「あとで行ってみようかな……」
　そう呟いたところで。

　目の前を、早川先生が通り過ぎた。
「あ、先生！」
　綾花は思わず、立ち上がった。しかし限界近くまで練習を頑張ってしまった足は、言うことを聞かず。
「わっ」
　何もないのに躓いて、うっかり体勢が崩れてしまう。
　それを、早川先生が受け止めてくれた
「綾辻さん、大丈夫？」
「あっ、大丈夫ですっ！」
　支えてくれた腕から手を離し、とっさに体を離す綾花。
（だって私水着だし、そんなっ……）
　焦っている綾花を、早川先生は困惑顔で見下ろした。
「ごめんね。いきなり手を出して」
「いえ、私こそ転んでしまって、すみません」
　綾花がよたよたと、デッキチェアに戻る。
　早川先生は、その隣のチェアに腰を下ろした。
「珪先生は泳ぎ得意ですか？　私、さっきまで練習してたけど、体力が続かなくて」
「僕もあまり……普通に泳げる程度だよ。でも練習をしたことはないなあ」
「もう少し鍛えて長い距離を泳げるようになりたいんです」
　綾花はそう言って、持参したスポーツドリンクをごくりと飲んだ。
　それから、傍らに置いてあった本を取り出す。
　もちろん、濡れても平気なように、ビニールのカバーをかけてある。
「一応泳ぎの本は読んできたんですけど……」
「それは、このまえ図書館で借りたものだね」
「はい」
　笑顔を見せた先生に、綾花ははにかんだ。
　図書室には毎日たくさんの生徒が来るはずなのに、綾花が借りたものを覚えていてくれたのが嬉しい。
「そうだ！」
　綾香はぽんと手を打った。
「珪先生、泳いでるところを見てもらえますか？　それで、アドバイスをお願いします」
「疲れてるのに、まだ泳ぐの？　平気？」
　先生は心配そうに、綾花の顔を覗き込んだ。
　綾花としては、大好きな早川先生と話したおかげで、気力はすっかり戻っている。
「大丈夫です！」
　思わず大きな声でいうと、先生は驚いた顔をして。
「じゃあ、見せてもらおうかな」

　綾花は再び７レーンに向かい、クロールで泳ぎ始めた。
　腕は真っすぐ、足首はしなやかに。
　息を吸うときは、顔を前に上げないよう。
　本に書かれていたことを、できるだけ忠実に再現する。
　そしてやっと25メートルを泳ぎ切り、プールから上がると、また先生のいるところへと戻っていった。

「どうでしょうか？」
　また猫タオルで体を拭きながら、デッキチェアに腰かける。
「うん、綺麗なフォームだったよ。このまま練習を続ければ、速くなるんじゃないかって思うけどな。体力だって、だんだんつくだろうし」
「わかりました、ありがとうございます」
　元気よく、綾花は答える。
　ただその目は、早川先生の白い肌に引きつけられていた。
「珪先生は日焼け止めって塗ってますか？　色白で肌綺麗ですよね」
　思わず言えば、先生が苦笑する。
「図書館ばかりにいるから、焼けないだけだよ。それに綾辻さんだって、ずいぶん白い」
　先生はそう言って、綾花の腕を見下ろした。
「そうですか？　私は気を付けているんですけど、塗り直しを忘れてることが多くて。日焼けすると赤くなって痛くなって黒くならないんです」
「ああ、色の白い人はそうだって言うね」
「ええ、毎年ヒリヒリしてます」

　先生とはまだ話していたい。
　綾花は猫タオルを肩にかけた。
　ちょっとでも、日に当たるところが減って、日焼けしなくてすむように。

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