仮のちぎりを　いかで結ばん｜リアクション

仮のちぎりを　いかで結ばん

「本会議で確認、または決定したことを発表します。
今週中にちぎりの保護場所の移転を行う。場所は生物部の飼育小屋とする。下校時間後は猫鳴館で保護を行う。生物部・猫鳴館以外の保護者として、緋紅朱赫乃さんの協力をいただく」
森蓮が会議のまとめを読み上げる。
「学外退去の期限、つまり今週中は、ちぎりは用務員室で保護する。日月透先生に健康状態を診ていただきながら、参加者が提案した……あるいは、予定している治療方法を順に試す。以上です」
『ひと』である蓮にはろっこんを含め、もれいびたちには通ずる多くを明かそうとしない者も多い。なので蓮の説明もこのあたりはピントがぼけたものになる。
「一週間でちぎりさんの体調の改善が見られなかった場合は、先ほど挙げた場所が責任持って保護を行う。ちぎりに傷病が発生した場合は、保護場所はたちもり動物病院に変更。その経過および結果は、本会議参加者には逐次周知するものとする。以上です。報告役は、私が責任をもって最後まで務めます」
蓮は短く刈り込んだ頭を深く下げ、この場に集まった全員に感謝の意を表す。
「では、私は本日の会議内容を議事録にまとめて、先生方に提出します。退出後に治療を試みたい方がいらっしゃれば、よろしくお願いします」
そう言って、話がまとまるや蓮は資料をまとめ、大天使天吏から議事録を預かると退出していった。

「あいつ、自分がいたらまずいって、なんとなく感づいているんじゃないかな……」
御剣刀が立ち上がる。日月透に、もう続きを話してもいいのだと身振りで告げる。
「わかりました。先ほどのちぎりさんの状態についての補足を……神魂に関わる部分についてお話しします」
生徒たちの表情が一瞬に変わる。みな、食い入るように透を見ていた。窓際の三ヶ島葵だけは、おもしろがっているような笑みを貼り付けたままであったが。
「御剣君と私で確認したのですが、神魂の影響があるのは翼だけです。羽毛を抜き取ってみたところ、抜いたところからは水が出ず、取り除いた羽も短時間で水を出さなくなりました。乱暴な言い方をすれば……翼を落とせば、この問題は解決します」
例とはいえ、あまりに衝撃的な解決方法を聞かされ、生徒たちの間に動揺が走る。
「ちぎりにはかわいそうだが……最悪、羽をすべて抜く方法も考えておいたほうがいい」
刀はつとめて冷静に、次の行動について提起する。
「結果は生え変わるまで様子を見なければわからない。それに……こいつの体にもきついと思う。だが、違う解決法が頭にあるやつはいるんじゃないか？　いたら名乗り出てくれ。協力してほしい」
刀の呼びかけに、いくつもの手が挙がった。