『らっ！』を探しだせ！！｜リアクション

『らっ！』を探しだせ！！

（いったい、どこにいるんだよ……！）
　懸命に街を走る源竜世の姿に、すれ違う人々は思わず振り返る。
　竜世が歯を食いしばり、懸命に走る姿は緊急性を感じさせてならない。
　だが、そんな人々の視線などお構いなしに。竜世は走る。
（学校にはもういねえよな……）
　頭に思い浮かぶ場所へ、手当たり次第。流れる汗もそのままに、竜世は駆けるのだった。

「トラントゥール様、いつもありがとうございます」
　丁寧な店員が微笑みと共に頭を下げれば、タイラ・トラントゥールは表情も変えず紙袋を受け取った。
　この洋菓子店の菓子の味はタイラをはじめ家族の口に合い、度々利用している。
「またのお越しをお待ちしております」
　予め伝えておいた商品は丁寧に包まれ。店員は恭しく扉を開き、タイラを送りだした。
　その時。
　タイラの視界の端で焦げ茶色が動いた。
　それを見た瞬間に、タイラは
（竜世……？）
　思わず一人の少年の姿が浮かんだ。
（いや、何を考えているんだボクは）
　タイラが頭を振った。クセのある艶やかな金髪が輝きと共に揺れる。
（どうにも最近、アイツのことが頭にチラつくな……）
　ふぅ、と溜息交じりに自宅の方向へと歩みを進めるタイラだった、が。
「あっ！見つけた！」
　聞き覚えのあるタイラの耳に響いた。
　タイラの目に映る、琥珀色の瞳を持つ少年。その姿が凄い勢いとスピードでタイラへと近付いてきた。
　本当に竜世だったのか……！と思った時には既に、タイラの空いた手は竜世に掴まれていた。
「タイラ！公園行くぞ！」
「おい、なんなんだいきなり！？」
　露草色の瞳を真ん丸に開き、タイラは驚きの声を上げ、踏ん張る。
「いいから！」
　更にグイッと力がこもる竜世の掌。
　先日、タイラの部屋でタイラの手を握りしめた時のように、熱を帯びた竜世にタイラは尋常じゃない気配を感じ。
（まったくこいつは……）
　そう思いつつも、竜世に手を掴まれたまま共に走るのだった。