『らっ！』を探しだせ！！｜リアクション

『らっ！』を探しだせ！！

　桜花寮の自室に戻るのは恵御納夏朝。
　1人部屋で過ごす夏朝、だが。
　彼女が帰ってくると、テテテと近寄り顔を出す一匹の猫。
「ただいま、おはぎちゃん」
　そう言いながら夏朝が頭を撫でれば、ちょっと不思議な愛猫は目を細めた。
（寝子島の『ラグドール』さんや『ラガマフィン』さんなら条件満たして癒されるのに……！）
　猫の種類を思い出しながら思う、が直ぐに首をふるふると振り。
（猫さん無理矢理連れ出したく無いし）
　生き物や動物ではあるけれど、物ではない、と思う夏朝。
（……ねこシールで代用しよう、駄目元で）
　そう考えながら、夏朝は部屋にあった小型のラジオやラップを鞄へとしまう。
「また後で遊ぼう、ね」
　愛猫をもう一撫でし、夏朝は部屋を出るのだった。

　御巫時子と五十嵐尚輝は並んで街を歩いていた。
　それだけならほっこりする風景ではあるが……2人の手にはラケットにラグビーボール。
　尚輝が小脇にラグビーボールを抱えている姿は新鮮で。
「こころよくお借り出来てよかったですね……」
　寝子島高校内にてテニスラケットやラグビーボールを借りつつも。まだ夕暮れまで時間はありそうだ。
「もう少し探してみましょうか」
　そう言う尚輝と共に、色んなお店を回る2人。
「……マーライオンの置き物は違いますかね」
　そう呟きながら、そっと棚に置き物を戻す尚輝。
「ライオンの置き物でしたら良かったですね……」
　いつもだったら素通りしてしまうような店も一件一件周り、目を凝らす。
　そんな時間を過ごせることは嬉しいのは勿論だが、それ以上に、理由も聞かずこうして懸命に付き合ってくれる尚輝の優しさがとても嬉しくて。
（この時間が世界の危機と関係なければ、とっても幸せなものですのに……）
　ふぅ、と時子が息をそっと吐けば。
「……あ」
　何かに気付いたように、尚輝が素早く動いた。
「尚輝先生、どうされました……？」
　時子が後ろを着いて行けば、尚輝が止まった先は和菓子屋だった。
「御巫さん、ほら。彼が飲んでいるあれも……」
　振り返り、笑みを見せる尚輝。
「ん？五十嵐先生に、御巫か」
　店先のベンチに座っていたのは御剣　刀。
　手には昔懐かしいラムネの瓶。そして更に言えば足元には数本の空瓶が。
「やっぱり、コレに目を付けたか。俺は飲み終わったし、土産用にも購入したから、他を探してくるな」
　大荷物の刀であったが、更にラムネ瓶をいくらか手にすると軽々と持ち上げた。
　それじゃあ、と刀が去ったことで空いたベンチに時子と尚輝は座り。
「せっかくですから、僕らも休憩していきませんか」
「はい、そうしましょう……」
　尚輝が店内にてラムネを購入し、時子へと手渡す。
　冷たい瓶のビー玉を押し込めば、シュワリと爽やかな泡がパチパチと弾け。
　口に含めば、その喉越しに2人揃って目を細め。
「夏も近いですね……」
　全くです、と頷く尚輝と共に。しばし初夏を堪能するのだった。