『らっ！』を探しだせ！！｜リアクション

『らっ！』を探しだせ！！

　地球の危機。
　その言葉を聞いた際に、普段は物事に動じない時子であっても、流石に眉を顰めた。
　御巫時子の顔に浮かんだのは一人の男性……五十嵐尚輝の姿。
　尚輝と過ごすゆったりとした時間が失われてはならない、と時子は思う。
（沢山探すにはどうしたらいいでしょう……）
　考えながらあるけば、いつの間にか足は学校へと向かっていた。
（きっと今日も……）
　時子が研究室を覗けば、やはり今日もその人はいた。
「おや、御巫さん。どうされましたか？」
　キョトンとした表情を見せる尚輝。しかし、時子の不安気な様子に気が付けば、その表情は心配を強めたものに。
「あの……実は……」
　尚輝はもれいびではあるが、そのろっこんには無自覚であり。
「尚輝先生に、協力していただきたいことが……」
　理由については触れず。しかしその時子のお願いに
「構いませんよ」
　いつもながらの小さな声で。しかしはっきりとした口調と共に、尚輝は頷いた。

　探せば、すぐにいくらかの『ら』アイテムは見つかった。
　研究室にあったライター。
「ラがつくもの……これはどうですかね」
　尚輝が持ちだしたのは、石鹸。
「石鹸、ですか……？」
「えぇ、この石鹸にはラウリン酸が配合されています。ココナッツオイルにも含まれていますね、後は……」
　化学教師らしい話が続く。活き活きとした尚輝の姿に時子は真剣に耳を傾けながら
「ぜひ、それを持っていきましょう……。後は、校内も探してみましょうか……？」
「えぇ、そうしましょう」
　こうして時子と尚輝は校内で『ら』を探すのだった。

　恵御納夏朝は刀と別れ、いくらかの買い物をした後。
　もう一度公園へと戻ってきた。
「流石、早いですねっ」
　白猫・ミラが夏朝の姿に嬉しそうな表情を見せる。
「隕石の落下を防がないと。ミラちゃんや皆のために頑張るね」
　引き締まっていた夏朝の表情がミラの笑顔により若干に綻び。
「ありがとうございますっ」
　にゃあん、とミラが喜びに鳴けば、夏朝はその白く整った毛並みを撫で。
（気持ち良い……！）
　撫でられ目を細めるミラ同様、夏朝の目も細まった。
（はっ！？）
　撫で楽しんでいる場合ではない。
「とりあえず、僕が持って来たものを預けるね」
　夏朝が取り出したのは可愛い猫さん柄のランチバッグ。
「可愛いですね」
　ミラの言葉に
「この中に入っているのが……」
　ランチバッグの中から取り出したのはラムネにラングドシャ。ライチも買ってくるようだったが後で刀が持ってくるだろう。
「こんなにたくさん、ありがとうございます！」
　ミラの言葉にふるふると首を振る夏朝。
「多ければ多いほど良いんだよね。もっと持ってくるから、もう少し待っててね」
　そう言うと、夏朝はカバンから紙とペンを取り出し。サラサラッと紙に猫の絵を描いた。
　そしてそのイラストも猫柄ランチバッグの中へ。
「何を入れたんですか？」
　ミラが覗き込めば
「猫さんのラクガキだよ。あと……」
　更に夏朝が書くのは
【一旦置いて行くけど持って行かないでください　かーさ】
　と書いたメモをランチバッグに添える。
「私も見守ってますね」
　凛々しくキリッと頷くミラ。その顔を夏朝はジッと見つめ
「そういえば、ラングドシャが猫さんの舌って意味、初めて知ったよ」
　ランチバッグの中のお菓子を思い出し。
「ミラちゃんや猫さんの為にも、頑張る……にゃんぐどしゃー！」
　おー！と腕を上げる夏朝に。ミラもつられておー！と片手を上げるのだった。

　公園を出て行く夏朝の姿に
（でも、私の舌は食べないでほしいですね）
　等と思いながら毛繕いするミラだった。