『らっ！』を探しだせ！！｜リアクション

『らっ！』を探しだせ！！

「内容を噛み砕いてみたアルが……やっぱり、ちょっと何言ってるかわからないアル」
　公園を出た畑中華菜子は腕組みをし、首をひねった。
　私服であるチャイナ服に身を包んだ華菜子。中学生の時から語尾に「～アルヨ」を付け始めた素敵感性の持ち主であるが、それでも理解に苦しむことがある、この寝子島では。
　隣を行く薄野五月も
「何だか大変なことになりましたねー」
　と相槌を打つ。しかしそのローテンションゆえか全く大変なことに感じられないのは五月クオリティ。
「でも！大変みたいだから五月ちゃんと頑張ってみるアル！」
　えいえいおー、と華菜子が腕を上げれば、五月もそっと拳を握る。
「とにもかくにも、頭文字に『ら』がつくものを見つければ良いのですよね」
「頭文字に『ら』と言えば！　やっぱりラーメンは外せないアルナ！」
　華菜子が控えめな胸を大きく張る。
「そうですね、外せないですね華菜子さん」
「でも、今から作って公園に持っていったら伸びてしまうアル」
　ふむ、と華菜子がまたも腕を組み、首を傾げ。
「でしたら、他にも何か『ら』の付くものを探して持っていきましょう。時間がまだありますし」
　夕暮れにはまだまだ時間がある。そう思った2人が頭を悩ませた。
「ら……」
「ら、ら、ら～～」
　華菜子と五月が歩きながら考える。五月はそっと眼鏡を押さえながら思案した。
（アルパカ系で何か……アルパカ……ら！）
（ら、ら、ら……ら！！）
　五月と華菜子の視線が交わり、そして同時に口を開けば声が合わさった。
「「　ラ　ク　ダ　！　」」　
　思わずお互いに笑みが零れ。
「動物園にいないかな！行ってみるアル！」
「そうしましょう」
　２人は瞳を輝かせながら、動物園へと急ぐのだった。

　御剣刀は、カレー店にて特大カレーをもりもりと食していた。
　腹が減っては戦はできぬ、とばりにカレーを口へと運ぶ刀。
　大量のカレールーとライスが刀の口中に吸い込まれていく。
　引き締まったその身体のどこにカレーは吸い込まれるのか、店員さんもビックリである。
「店員さん、付け合わせのらっきょうテイクアウトしたいのだが。あ、あとラッシーおかわり」
　
　刀がカレー店を出れば。
「……さて、朝飯も食べたことだし」
　朝食に値するのか、と突っ込まれそうな食べっぷり。
　戦利品のらっきょうを購入し、更なるラッシーを飲みながら足は旧市街の参道商店街へ。
（『ら』のつくもの……ライチとかラズベリーとかかな）
　果物店の前を通れば、容易にそれは見つかった。
「すいません、そこの……」
　フルーツを指差しながら店員に伝えようとすると、更に果物店の扉が開く音が響き。
　刀が見れば、そこには見慣れた小柄な少女の姿が。
「……御剣君も、フルーツを買いにきたのかな？」
　同じクラスの恵御納夏朝がそこにいた。左手には愛パペットのハルくんもおり、夏朝の代わりなのかペコりと刀に向かって頭を下げている。
「あぁ、ライチとラズベリーをな。恵御納もか？」
　こくん、と夏朝が頷けば。
「じゃあ、ここにあるのを全部貰おう。必要なかった分は俺が食べれば良いし」
「それなら僕は、他の『ら』を探してくるね。……全部食べちゃダメ、だよ」
　夏朝が無表情の中にもしっかりとした想いを込め、刀を見やる。
「勿論だ」
　その言葉を確認し、夏朝は果物店を出た。
（あとは、洋菓子店とかかな……）
　夏朝は思いつく洋菓子店へと足を進める。

　大量のライチとラズベリーを手に、刀は考える。
（ラズベリーケーキやライチジュースとか……調理したものありか？）
　もう少し探してみるか、そう思いながら刀は果物屋で購入したラズベリーを一粒口に入れた。
（ん、美味いっ）

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