ミントグリーンのひと時を　―或いは静かなる碧の侵略―｜リアクション

ミントグリーンのひと時を　―或いは静かなる碧の侵略―

急：緑の侵略は続くのか？

　――しばらくして。

　イートインではミントを使ったお菓子の試食会がスタートした。楡宮遠海は用意されたチョコミントアイスやミントのジュレがはいったマシュマロ、ゼリーなどが用意されていた。
「おいしい……」
　口にした途端、風味が鼻孔を抜ける。それでいてほんのり程よい甘さが舌にとろける。ほどよいひんやり感が心地よい。
　その他にもチョコミントクリームをつかったビスケットサンドや、ミント風味のプリンもあり、目移りしてしまう。
「どれもこれもおいしそう！」
　そういいながらついつい痩せの大食いを発揮（？）し、いろいろたくさん食べてしまう遠海であった。

　月守輝夜は青木慎之介と共に試食のミントゼリーを食べながらこんな提案をしていた。
「ミントの苗の配布があるみたい。なんでも店主さんがミントの増えすぎで困っているそうよ？」
「へぇ……」
　慎之介が興味を持ったのを感じ、輝夜はちらり、と店内を見渡した。よく考えてみればミントフェアというのも珍しいものである。
「あとで何かあったら買ってみようかな……」
　そうポツリとつぶやくと慎之介はグラスのミントティーを飲み干し
「俺はこれを買おうかな。なんか夏らしくてフレッシュな気分になるし。あと制汗剤かな？　部活でも使うだろうから」
「私もそうしようかな」
　おそろいの物を持つというのはちょっとうれしいかもしれない、と思いながら輝夜は小さく微笑んだ。

　一方、ミントの苗の配布にも、何人も集まっていた。
「何株かいただけませんか？」
　立花深紺灯が相談すると、シグルトは「けっこう増えているから１人あたり１０株ぐらいもらってもいいよ」と答えてくれた。
「そんなにいいんですか？」
「まだまだあるからね」
　驚く彼女の傍ら、鴻上彰尋もまた苗をもらいたい、と挙手した。ミントシロップは一度作ってみたかったし、肉料理にも使えそうだ、とわくわくしている彼は目がきらきら光っていた。
「シグルトさん、もしまだミントに困っていましたら、友人とかにも声をかけてキャンディやお茶とかアイスを宣伝しておきますね」
「よろしく頼むね。もしかしたら自宅で育てていたものも大繁殖している可能性もあるからねぇ」
　苦笑するシグルトだったが、ミントに困ることはなさそうだな、と彰尋は深紺灯顔を見合わせて笑いあう。
「僕も、１株もらっていいかな？　鉢植えに入れて庭の他の植物を虫から守って貰おうと思って」
　島崎嘉織もやってきて新鮮なミントの苗をもらう。どうやって持って帰ろうか、と考えていると深紺灯がビニール袋を重ねて入れていた。
（お買い物用に持って来てるエコバッグの中にビニール袋を重ねてから苗を納めれば中で土が零れても持って帰るのに困らないよね）
　それを見ていた彰尋と嘉織もまた、同じようにしてみる事に。
　そこに輝夜と慎之介も加わり、シグルトはミントの栽培についての注意点などをまとめた冊子を配った。
「大切に育ててくださいね」
　この言葉と共に。

　修は美和とその光景を見ていた。
「久保田先生は、どうします？　ミントの苗の配布だそうですよ」
「忙しいから枯らしちゃいそうだし、遠慮しておくわ」
　美和は苦笑しながらそういい、「でも……」と言葉を続ける。
「ここで育てたミントを使った商品が出たらまた買おうかなって考えてるの。それもミント消費に役立てばって思って……」
　そういいながら「ミントシロップは興味があるかも」とはにかむように笑う。そんな彼女に修は「俺もそうしようかな」と１つ笑顔で頷いた。

　ミントの香るお店は、さわやかかつ優しい空気に包まれていた。

（終）

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