いきなり人類滅亡！　文明再興できるかな｜リアクション

いきなり人類滅亡！　文明再興できるかな

◆渚まで何マイル！？

　滅亡後の寝子島は荒廃し、人っ子一人見当たらない。電燈の消えた夜は星が美しく煌めき、世界を彩っていた。

「えっ、なにこれ」

　羽生碧南は、目の前に広がる風景を見て、ぽかんとした顔でこう言った。見渡す限り、生え放題の雑草類や樹々が市街地を侵食し、建物はほとんど例外なく朽ちて半壊しかけ、地面もわずかに露出するアスファルト等から、ここは多分どこかの往来だとわかる。自分はつい今まで、学校の教室で居眠りしていたはず。朝練の疲れが残っていて、ちょうど眠気がすごくて、うとうとしていたはずなのに……。

「どうしよう……」

　困惑しつつ頭を抱える碧南だったが、そこで突然！　脳内妄想モードに入った。

（これ、確か『渚まで何マイル』で見たわ！）

　以前コンプリートした乙女ゲー『渚まで何マイル』そっくりのシチュエーションであることに気付いた碧南は、低空飛行していたテンションをアゲた。俗に言うテンアゲである。
　『渚まで何マイル』とは、人類滅亡後の世界に生き残った少女が、同様に生き残った攻略対象の青年や少年たちとサバイバルをしながら困難を乗り越えて結ばれるというストーリーで、碧南はそれをメチャクチャ燃えながらプレイしたのだ。

「とにかく、なんとか生き延びるわ！」

　碧南の脳内で、攻略対象たちのボイスやらスチルが鮮明に再生される。まるで近くに彼らがいると錯覚するかのように、鮮明に。彼女は暫しそれに浸りながら、身体はというとサバイバルの準備──必要なものをあちこちからかき集めた。そうして、まずはと近くの探索を始めた。ボロボロの寝子島高校の元校舎を出た後、桜花寮の跡地へと向かう。

（あそこなら、食料くらいは残ってるかな）

　それに、そこを拠点に島を探索していけば何とか生活していけるかもしれない。碧南はそう考えながら、桜花寮の瓦礫を押し上げた。中々の力仕事であるが、気合で何とかする。

「あった！」

　寮に入り、伸び放題の雑草を掻き分けてキッチンのあったはずの場所に向かう。そこももうボロボロで、滅亡前の面影はない。が、碧南はその隅に冷蔵庫らしき箱を見つける。彼女は冷蔵庫だったものの扉を開けると、中に手を突っ込んで食料が無いか探した。すると、幾つか未だ食べられそうな缶詰や乾パンが見つかった。雨風のしのげそうな場所を見つけて、ひとまず安心である。

　これから先、どうなってしまうかわからない。だが碧南は脳内妄想を糧に、今日も明日も生き抜くのだ。

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