いきなり人類滅亡！　文明再興できるかな｜リアクション

いきなり人類滅亡！　文明再興できるかな

　莉鳥と雅樹が宇宙船に辿り着いたのは、それから数日後のことである。

「これが……宇宙船？」
「うん」

　二人は宇宙船の中へ足を踏み入れると、船内をくまなく調査し、内部の機械類が壊れていないかどうかをチェックした。すると、奥から月詠が現れ、気さくに話しかけてくる。二人は最初こそ警戒していたものの、月詠の様子にそれを解いた。

「人がいたのか」
「居たよ。君らも生き残りか」
「何してるの？」

　莉鳥の問いに、月詠は背後のモニターとやけに綺麗な機械に目をやって、口を開く。

「もしかしてシステムまだ生きてるんじゃないかと思ってね。動力を修理できないかな。何か持ってる？」
「ま、まあいろいろと」
「貸してくれ」

　そう言われた雅樹は、莉鳥の顔を見た。莉鳥は首を振って、月詠の言葉を待つ。月詠は二人の様子を見て、補足した。

「そうすればより文化的な生活ができるだろうし、世界からの脱出を図れる」

　それから二言三言話し、月詠のことを信頼し、納得した莉鳥と雅樹は、集めた道具を月詠に渡し、早速修理を始める。

「通信できたら何か入るかね？」
「宇宙人と交信できるかもよ」
「なるほど。友好的になれたら宇宙船の修理に必要な材料やノウハウを教えてくれるかもしれないね」
「とにかく、やってみるか」

　そんなことを話しながら、三人は手を動かす。長い長い作業の途中、誰かの腹が鳴ったのを聞いて、莉鳥は立ち上がった。何処へ行くと言いたげな月詠の視線に、彼女はやれやれとため息をつく。

「何か獲ってくるわ」
「そうか。そこに釣り竿があるから使うといい」
「ありがとう」
「陽が落ちるまでに帰ってきた方がいいよ」
「知ってる」

　襲ってきた野犬のことを思い出しつつ、莉鳥は淡々とした調子で返して外に出た。暫しして、魚や果物をどっさり持って帰ってくる。三人はそれを食べながらああだこうだと話し、滅亡後の孤独を癒した。
　数日後、動力を回復した宇宙船は電燈でぱっと眩しく光る。モニターに浮かび上がる文字は解読できないが、パソコンの電源を入れたときのような画面から、何が書いてあるのかなんとなく推測出来た。

「よし！」
「早速交信してみよう」

　月詠はあれこれと推理しつつ、通信を表しているらしきボタンを押す。プルルルルル……とけたたましい音が鳴った後、通じたようで、誰かの声が響く。

『こちらM1-2132。どうした』
「墜落した。帰還したいが修理方法がわからない」
『任務に就く際に叩き込まれただろう。忘れたのか？』
「墜落の衝撃で記憶喪失になったんだ」

　そこで通信相手が黙り、沈黙が流れる。少し苦しいか、と月詠は冷や汗を垂らすが、通信相手はふむ……と言った後、こう続けた。

『仕方ないな。教えるから、もう忘れないでくれ』

　通信相手の話すそれを、月詠は一言一句逃さず記録し、莉鳥と雅樹は必要な機材を探し始める。

　それからさらに数日後、宇宙船の修理を終えた三人は喜びを共有しつつ、遥かな宇宙に思いを馳せた。

「これで脱出出来るなぁ」
「宇宙に行ったらどうする？」
「わからないわ」

　莉鳥はそう言ってから、こう言う。

「また新しい星を見つけるしかないわね」
「同感だよ」

　月詠もそれに頷いて、そうして発信のボタンを押した。エンジン音が轟々と響き、ふわりと浮かぶ感覚が三人に走る。宇宙服を着た三人は、自らの乗る宇宙船が空へ、大気圏の上へと昇っていくのを、窓の外の景色から察した。それをハラハラとした面持ちで見守りつつ、遠ざかっていく地球を思い、口を閉じた。

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