いきなり人類滅亡！　文明再興できるかな｜リアクション

いきなり人類滅亡！　文明再興できるかな

　月詠が宇宙船内を探索している頃、場所は変わって、寝子島高校の跡地で椎井莉鳥と北里雅樹は目を覚ました。廊下だったはずのそこに二人並んで横たわっていたことに気付くと、二人はどこか気まずそうに、いそいそと身を起こす。服は制服――指定の夏服のままである。
　学校で昼休みを過ごしていたはずだったのに、ディストピアSF（？）のような世界に放り込まれてしまった。といって、どうするわけでもなく、二人は無言で目を合わせ、頷き合う。カバンが残されていたことを幸運に感じつつ、二人はボロボロになった校舎を練り歩き、サバイバルの準備をする。役に立ちそうな物――とくに水筒やペットボトル、缶詰などの保存食品――を見つけると、カバンの中へと入れていった。建物の特徴や、こうなる前の自分の状況から、ここが寝子島高校であることは二人とも察しがついている。

「肉体労働とか全く苦手な文弱の徒の俺には、まったく不向きな世界だ」
「そう？　ピッタリだと思うけど」
「なんでさ」

　二人は噛み合わない会話をしながら、食堂や家庭科教室や技術科教室へと向かった。どこも滅亡前の面影はない。彼らは中からナイフや缶切り、アルコールランプ、ロープ、防水シートなどを集めると、カバンに入れ、飲み水になりそうなものを見つけると、水筒とペットボトルに注いだ。それが終わった二人は、屋上へと向かう。今にも崩れそうな階段を慎重に昇り、ガタガタの扉を力任せに開ける。

「この調子だと、猫鳴館のあるあたりは想像を絶することになってんだろうな……」

　雅樹は落ちないように気を付けながら、寝子島を一しきり見回した。寝子島の風景は彼の想像通りだったが、星ヶ丘のほうに何かの残骸めいたものを見つける。雅樹は莉鳥に振り向くと、手招きした。

「なに？」
「宇宙船がある」

　莉鳥も宇宙船の存在を認めて、頷く。雅樹は莉鳥と何やら相談しつつ、宇宙船の方へ向かうことに決めた。この時ばかりはさすがに、いつものようにはかみ合わぬ会話はしなかった。

　二人は寝子高の校舎から出て、互いにカバーするような形で前進を開始した。

「うわ」
「見事に塞がってるわね」
「しょうがない。迂回するか……」

　普段なら多分そう遠くない距離でも、瓦礫で塞がっていたり、道路に穴が空いていたりして、迂回などしなければならない。時折しょうもないことを言ってかみ合わぬ会話をしつつ、星ヶ丘へ向かう。そうこうしているうちに空は暗くなり、星が瞬き始めた。

「今日は野宿にするか」
「待って」

　丁度雨風のしのげそうな残骸を見つけたため、雅樹はバッグを置いて伸びをする。油断なく周囲に気を配ると、莉鳥が野犬を見つける。野犬は二人に気付くと、飛び掛かってきた。

「危なっ」
「気を付けた方がいいわね」

　莉鳥は目を閉じて指先に気を集中させ、野犬に向かって躊躇わず電気を放つ。彼女のろっこん『スタンハンド』の雷撃を受けた野犬は、数秒痙攣した後、地に伏した。

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