夜のひとときを……｜リアクション

夜のひとときを……

【始まり、始まり？】

　景貴が高久に黙礼しつつ、席に座る。
　すでに高久の前にはからになったつまみの皿があり、高久は上機嫌でマスターと話している。
「弟達が春からこっちに来ててな、俺は用事ついでにちょいとその様子見てくるように両親から頼まれて……ってやつだ」
　その様子に、景貴は兄貴分らしさを感じつつ、さて、何を飲もうかと悩む。
　その間も高久は話し続ける。
「色々妙な噂もあるみたいだが、元気で楽しそうならまぁ良し、ってとこだ。編入早々、肩脱臼の馬鹿やらかしてたが…綺麗に治っていたの確認できたしな」
　そんな高久の声もだんだんと遠くなっていく。
　ピアノの曲が変わったのも、景貴は気づかない。
（後は、お酒はブランデーを注文して、おつまみはブランデーに合うものをお願いしておこう）
　そんな風に思いつつ、ゆっくりと時間は過ぎてゆく……。