夜のひとときを……｜リアクション

夜のひとときを……

【来客　深夜２２時】

「困りました」
　荒井景貴は、旧市街の寝子島駅付近を歩いていた。
　フランスから帰国したばかりという景貴はたまにはお酒を飲んでみようと思ったのだが、幸か不幸か、そう言った良いお店に出会える機会は無かった。
　また、時間が時間故に、シーサイドタウンなど多くの店は閉まっているし、深夜もやっている居酒屋もあるだろうが、向こうには足は向かない。
　そう思って歩き続ける。
そのとき、不意にピアノの音が聞こえた気がした。
「あれ？　ここは？」
　当てもなく歩き、ふと顔を上げた景貴の前にふと、『Your Bar』と書かれた一軒のバーが姿を現していた。
「……こんな場所があったのですね」
　心地よいその音を聞きながら、誘われるように景貴はその扉を開けた。
　深夜の寝子島に、ふと、あまりにも小さな光が差した……。

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