キングオブキングス｜リアクション

キングオブキングス

■「自分が世界のひとつだとわかったなら、生きていけるのです」
　椿美咲紀が納める国家『ガーデン』は森林と山と川でできた、材木資源の豊かな土地にたっていた。
　多くのものは、この国家の事業を材木の伐採と販売だと考えるが……皇帝美咲紀の方針は違った。
「自然は私たちを生かし、そして私たちは自然の中にあるのです」

　生命とはなんだろうか。
　人生とはなんだろうか。
　多くの者がその命題に取り組み様々な答えを出したが……美咲紀の答えはこうだ。
「美しい花。美しい空。美しい木々に、美しい動物たち。私たちはこれを食べて、切って、『いただいて』生きているのです」
　産業が行程ごとに分断された社会ではそのことを自覚することは難しい。
　フライパンで焼いた肉がどこから来たのか、どう生きていたのか知ることはまれだろう。
　だがそこには完成された美しさがあり、人々はそれをいただいて生きていた。
　勿論一方的に奪うのではない。人間という捕食者がいて初めて、動物は増えすぎずにすむ。ひいては草を食べ過ぎずに済み、水が流れすぎずにすみ、空が乱れずにすんでいる。
　人が鹿を矢で射ることは、木の実をもぐことは、世界を美しくたもつサイクルのひとつなのだと……美咲紀は考え、そして学ばせた。

　ガーデンの民はそれゆえに自然主義者だ。
　天然や無農薬をうたう見せかけだけのナチュラリストとは根本的に異なる、『生きることが世界のサイクルである』という根源を知った自然主義者たちだ。
　彼らは多くを望まず、日々をただ生きている。
　だがそれが動物を、植物を、山を、空を、星を維持することにつながっていた。
　多くの人々はそれに気づかないが、山の土面が大きく崩れるのは山の木々を切りすぎたり草食動物を放しすぎたりするがゆえで、川があふれるのも魚を捕らなすぎるがゆえだ。
　ただ生きているだけで、ガーデンは自然災害がきわめて少ない国となった。
　国民の誰もが自覚せぬが、彼らはみな、星を守って生きていた。

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