キングオブキングス｜リアクション

キングオブキングス

■「誇りがあれば、それが国になる。土地も血も、きっと超えてみせるさ」
　志波武道――もといシバ国王は若くして王に即位した。
　それまで飄々とした人柄で貴族たちの関心を避けていたシバは先代国王である父の死後、王位とそれに伴う既得権益の確保のためあらゆる血縁が文字通り血みどろの戦いを繰り広げたが……お互いを徹底的につぶし合った末に残ったのは、一切の後ろ盾を持たず最後まで戦いに参加しなかったシバであった。
　シバの即位に国民たちが落胆の色を見せたものの……即位式にて見せた彼の姿に国民はその考えを改めることになった。
「俺が目指すは『プライドある国』だ」
　プライド。これを噛みしめるように繰り返し、シバは天をさすように指を立てた。
「国民はみな自らの可能性と適正を知り、幼いうちから専門的な知識を学んで貰う。あらゆる職業に誇りを持たせる。それが国の武器であり、世界にとどろくための声になる」
　その堂々たる姿に、かつての飄々とした姿は無かった。新たな国家の幕開けを感じ、国民は沸いた。
　シバ王国の誕生である。

　シバが取りかかったのは教育の抜本的改革である。
　有言実行というべきか、あらゆる専門家を幼い頃からカテゴライズしていった。
　ある種自由を奪う教育政策ではあったが、不思議なことに自由と誇りは対になって存在していた。
　技術や経験は遺伝しないが、誇りと環境は遺伝する。というより、親の背中を見た子供は親を追うものである。しかし平均的な教育体制によって技術をもてず、全く違う分野にドロップアウトするものでもあった。
　シバはそこをまず改革し、幼い頃から専門的な技術と経験をつけさせた。
　幼少から取り組んだ事柄は、その人間の骨子となる。ねじ一本からタワー建設にいたるまで、全ての分野のあらゆる職人がきわめて鋭い専門知識と先端技術の開発に勤しみ、シバはそれを手厚くサポートした。
　欠点があるといえば国民の間に技術者間の壁が生まれ相互不干渉の空気が常識化したことだが、これもまた誇りと自由の対であった。
　前王後継者争いで荒野に散った没落貴族たちをシバがかき集め、各専門家コミュニティの間を繋ぐためのパイプ作りを行なったのだ。
「俺は、全国民の中で一番苦しい立場でなければならない。けれども……一番国の成長を感じられる立場なことを幸せだとも思う」
　記者の取材にこう応え、シバは今日もプライドある国を動かしている。

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