キングオブキングス｜リアクション

キングオブキングス

■「話し合える第一条件は、奪われないことである」
　武人国。その名が付くとおり古くは武力によって各土地を統一支配し生まれた国家である。
　国土は小さく、大陸国家でいう市町村クラスの土地を修羅の如く奪い合い続け、最終的により高い武力と戦略をもった人間が統一するという形で立ち上がり、そして戦いの中で生まれた数々のローカルルールは他国に一切通用すること無く、気づけば他国からの侵略におびえる状態が生まれていた。
「我が名は尾鎌、この武人国の長、武尊である」
　そんな中生まれた新武尊尾鎌蛇那伊。
　彼は占領におびえる国家を一代にして塗り替えた偉人である。
　彼が即位してからの武人国はこう呼ばれている。
　『無敵の国家』と。

「我が国の国是は『民を護り得る国』であーる」
　宣誓式。鳴り響くラッパの中で述べた言葉を抜粋したものだ。
　きわめてミニマムに考えると、国は人。個人に例えることができる。
　学校のクラスで誰からも攻撃されない人は誰だろう？
　最も美人なひと。喧嘩が強くて皆を殴る人。影で目立たない人。勉強の出来る人。
　否、尾鎌はこう述べる。
「十分な戦力武力に裏打ちされた外交力である」
　スポーツができて喧嘩をしても強いがもめ事が起きれば必ず仲裁にはいり誰とも会話ができる人物。
　攻撃されない、無敵の人物。
　無敵の国家である。
　尾鎌はまず他国の干渉を恐れた。しかし鎖国という手段ではなく、積極的に『国家間外交における中立国』として振る舞うことで、力の空白地帯を生み出したのだ。
　そのための地盤として、体力作りと国軍および警察機関への税金投入に舵を切り、兵器開発に注いだ力は（比較的）積極的に他国へと開放した。
　兵器の売却はそのまま食品その他の輸入を後押しし、国家間における貿易を強めることとなった。
　結果として国には数多くの民間軍事団体および兵器開発企業が生まれ、国民の武器携帯は勿論個々人の自衛能力も極めて高い水準を保った。
　そうした国であるからこそ武力的干渉は難しく、多くの国が外交官を送り込む手前互いに手出しが出来ない国へと変わっていったのだった。
　勿論、軍事を強化することで（外交を飛び越えた）戦争を引き起こすとして批判する政治家もあったが、それはあくまで政権を奪うためのパフォーマンス。
　尾鎌はまるで動じることなく、こう返したという。
「民を虐げては『民を護り得る国』と言う国是に反する。それに、侵略戦争は悲劇を生む」
　最後まで国是を守り、尾鎌は無敵の国を作り上げたのだった。

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