【星幽塔】第四階層　湖中の戦い｜リアクション

【星幽塔】第四階層　湖中の戦い

○グリムとブラム

　桜たちがカニを獲っている間に、修は喧嘩をしている緑と黒の魚人の元にたどり着いた。
「君たちがグリムとブラムか？　俺は八神修。シドニウム先生の知り合いだ」
　シドニウムからもらった手紙を見せ、自己紹介する。
「ナニカ　ヨウカ」
「君たちの喧嘩の原因を教えてほしい。俺にできることがあったら力になりたい」
　丁寧に紳士的に、修は訴える。　　
　不機嫌だった二匹だが、諦める気配のない修の様子にしぶしぶ口を開いた。　
「コイツガオレノ女ヲトロウトスル」
「バカナ、ソレハコッチノセリフダ」
　どうやら、皆の推測は間違っていなかったらしい。
「あ、いたいた」
　そこへ桜とペルラがやってきた。
「グリムさん、新鮮なカニを獲ってきました。今料理するから食べてください」
　桜が言い、ペルラも続いて、
「私もカニ料理を作りたいんですが、方法がわからないんです。カニ料理が得意と聞きましたので、コツだとか、味付けだとか、お教えいただきたいなと思って……」
「カニカ……ヨシ、教エテヤロウ」
　グリムの表情が緩む。それを見たブラムは軽蔑の眼差しを向けた。
「軟弱ナ。オマエニハ小娘ガ似合いダ」
「ナンダト！」
「まあまあ、ブラムも一緒に食べよう。出来上がるまで話をしようじゃないか」
　修がなだめる。
「相談に乗りたいんだ。男の友情って奴だ。こういうことに種族は関係ないさ」
「変ナヤツダ」
「あまり時間がないし、さっさと調理しましょ。あと３０分で戻らなきゃ」
　桜は時計を見ながら言う。
「任セロ」
　グラムは料理の支度を始めた。
「それ、包丁ですか？」
　ペルラは興味深そうに見ている。
「石デデキタ包丁ダ。我々ハ火ヲ通サズ新鮮ナママ食ベル」
「包丁捌きが上手ですね」
　演技ではなく本当に興味を持って感心しながら、ペルラは思う。
（グリムさんも少しでも気分転換になればいいな）
「彼女に直接気持ちを聞いてみないか。リラが決められないなら試練を課してもらうとか、互いの得意種目１種目ずつで勝負するとか」　
　修はいろいろな解決法を提案した。
　二匹は考えているようだ。
「ソウダナ、コノママデハラチガアカナイト思ッテイタ……」
　ブラムがつぶやき、グリムが蟹を皿に盛り付け何かをかけた。
「デキタ」
「こんな調味料があるんですね。味見させてもらってもいいですか？」
「アア、陸ニハコンナモノハナイダロウ？」
　どうやらグリムの気を紛らわせることには成功したようだ。　
「調味料は興味深いな。だが蟹は茹でたり鍋にしても美味い。陸でも食べてみないか？　地域交流すれば住民の不安も拭えるからね」
「ソウダナ……」
　修の誘いに、二匹の気持ちも動いたようだ。

　蟹から逃げきったティオレは、宝探しを諦めていなかった。
　普通の人なら、大蟹の住処に近づきたいとは思わないだろう。
（蟹が宝を守っていたのかもしれない）
　再び元の場所へ向かい、蟹がいないのを確認しながら慎重に掘ってみる。
　泥の中に、鈍い光が見えた。
（見つけた！）

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