夢のふくびきや｜リアクション

夢のふくびきや

ふくびき・クライムアクション体験。真境名アリサ

　ガラガラを回した真境名アリサ、気づけば体にぴったりフィットしたボディスーツに身を包んでいた。
　周囲を見回すと、そこはサイバーパンクな世界。まるでSF映画の中に迷い込んだようだ。
「あ？」
　アリサは目の前にあるものに気づいた。
　最新鋭のセキュリティで完全防御された要塞、ダムのような壁がそびえ立っている。
　今の自分がどういう状況か、それはすぐに理解できた。
「サイバースペース……ダイブしてるのね、あたし」
　アリサは空間に手をかざした。すると、ウィンドウが開き、PCやスマホのディスプレイのように情報や映像が映し出される。アリサは凄腕のサイバーシーフとしてここにいるらしい。
　ディスプレイを操作し、要塞の正体を探る。
「そういうことね」
　アリサは楽しげに言ってディスプレイを閉じた。
　彼女がいるのは闇のビットコイン取引所で、マフィアやテロリストが犯罪で得たリアルマネーをビットコインに替えることでマネー・ローンダリング行っている闇サイトのセキュリティ。この向こうに目当てのビットコインがあるのだ。
「ん？」
　視線を感じ、視線を走らせると、野球ボール大の球体がふわふわと浮かんでいた。そして、それについているレンズがじっとこちらを見ていた。どうやら監視カメラらしい。
「見られている、ってことね。でも」
　アリサは要塞の周囲を回るように駆け出した。追いかけてくる監視カメラに対し、右手を、空間をなぞるように走らせた。開いたディスプレイを操作し、手に拳銃のような物を出現させる。
　握って引き金を引くと、監視カメラは爆発して周囲に部品が飛び散った。一瞬でハッキングをし、システムを壊すアイテムであり、サイバーシーフのアリサの武器だ。
「今のうちね」
　アリサが要塞の壁に手のひらをかざすと、『rock』という表示が。それから、壁に鍵穴が出現した。つまり、施錠されていて、専用の鍵がないと開かないようになっているのだろう。
　アリサは鍵穴に銃口を向け、引き金を引いた。
　要塞の壁の一部にノイズが走り、大きな穴が開く。
「目標は一つだけ」
　敵のセキュリティをいかに潜り抜け、ビットコインを根こそぎ奪い取り、脱出を計るか。
　穴に飛び込んだアリサは銃をしまい、目元にゴーグルを出現させた。リアルタイムで情報が流れ込んでくる。
暗いトンネルのような通路にはレイザーポインターのような赤外線センサーが張り巡らされていた。　　素早い身のこなしで避けつつ、時には銃でハッキングをかけてシステムを壊す。
「この程度のセキュリティであたしを阻止できると思って？」
　そこを抜けると、無数の分かれ道が出現した。
「情報通りじゃない」
　金庫はこの先だ。事前に調べてある。
　アリサは真ん中の道へ飛び込んだ。
　細い通路をひたすら行くと、すぐに広い空間に出た。いかにも金庫といった感じの鉄の扉が目の前に。
「腕がなるわ」
　アリサはゴーグルをしたまま金庫の壁に手をついた、その時。
「！」
　自身の周りに電流の檻が出現したのだ。
「何、これ」
　焦ったアリサがそう呟くと、頭上から声が聞こえてきた。
「くく。まさかこそ泥の正体が若い女性だとは」
　どうやら闇サイトの管理人に見つかってしまったようだ。
「おとなしくしてもらおうか。その素顔を暴いてさらしてやろう」
「あっ」
　アリサの体は電流の檻ごと宙に浮かんだ。
「さぁ、お嬢さん。取引所へ案内しよう」
　金庫の扉が開き、何やらデジタルな数字が飛び交う空間へ。ここが取引所なのだろう。
「この奥にビットコインがあるってわけね」
「その通り」
　アリサはニヤリと笑って、小さなディスプレイを表示させ、操作をした。
　すると、
「む！？　どこへ行った」
　アリサはまだ檻の中にいるというのに、管理人の焦った声が聞こえてきたのだ。
　出現した檻を媒介に管理人のディスプレイにハッキングを仕掛けたのだ。もう彼にアリサの姿は見えない。
「逃げたか」
　管理人は檻を消滅させる。
「逃げられるものか」
　アリサは檻から解放され、床に着地、ビットコインのある扉へと駆け出す。
「このサイトも終わりね」
　ビットコインを根こそぎ奪い取り、最後に管理人のPCにハッキングをかけて、サイトを消滅させたのだった。

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