夢のふくびきや｜リアクション

夢のふくびきや

ふくびき・バトルアクション体験。春山小枝

　ふくびきやのガラガラを回した春山小枝はいつの間にか屋外に立っていた。
「ここって……」
　小枝は戸惑いながらも辺りを見回す。
　そこは確かに寝子島なのだが、何やら雰囲気がいつもと違う。
　と、その時。腹に響くような地響きがし始めた。
　小枝が恐る恐る振り返ると、
「！？」
　そこにいたのは、身長が優に数十メートルはあろうかという、『大怪獣ゴアラ』だった。
「ぎゃおおおおおおん！」
「ゴ……ゴアラだー！？　な、なんかこんな夢前にも見た気がする！
あれも夢じゃなかったんだっけ！？　あの時は映画の……って、きゃー！　言ってる場合じゃなかったー」
　ゴアラに背を向けて、走り出すも小枝ははっとした。
「……ううん。きっと、逃げてばっかりじゃだめ。みんなが私を助けてくれたみたいに、きっと、何かができる」
　逃げながら、辺りを見回す。
「でも、どうしよう～！？　とにかく私自身に何かできることを探さなくちゃ！　あれ？」
　小枝の視線の先に手招きをしている人影が……。
　近づくにつれ、それの正体がわかってきた。
　小枝は慌てて足を止める。
「何、あれ？」
　確かにそれは人影の形を取っていたが、絡み合う蔦がいくつもの足を形成している。
「見たことあるような」
「ユーカリスだ、ユカ」
「しゃ……しゃべった」
　しかしながら、言われてみれば、ゴアラのライバル怪獣だ。ミニバージョンといった様子。
「ゴアラを止めるために協力してほしいユカ！」
「え……ええ……。なんとかできる方法があるの？」
「君を巨大化させる方法ならあるユカ」
　小枝は自分を指で指した。
「私を！？」
「行くユカ」
「ま、待って。心の準備を」
　しかし、ミニユーカリスは待ってはくれなかった。
「わ……わわっ」
　徐々に視界が高くなって行く。
　やがて、小枝は向かい来るゴアラと目線が同じになったのだった。
「成功だ、ユカー！」
　下の方から響いてくる声に慌てる。
「神魂てなんでもありなの？　そ、それに」
　自分の体を見回す。服装などは変わらず、ただ、いつもの小枝が巨大化しただけのようだ。
「これでどうすればいいの！？」
「戦うユカー！　大丈夫、身体能力は上がってるはずユカ」
「うう、って言われても」
　ゴアラはすぐそこまで迫っている。
　小枝はふと、以前、ゴアラに遭遇した時のことを思い出した。
「今は一人だけど、みんなを守りたい」
　小枝は言い聞かせるように呟いて、駆け出した。
「えーいっ」
　ゴアラの両肩を掴み、これ以上の進行を止める。
「ぎゃおおおおんっ」
「うっく、これ以上は、行かせない、よっ」
　まるで相撲のような状態だ。そして、
「えーいっ」
　力任せに、ゴアラの体を突き放す。
　背中から倒れたゴアラはバタバタと暴れ始める。
「ぎゃおおおっ」
「こ、これはチャンス？」
　テレビで見たことのあるプロレスの試合では、この後の攻撃は決まっていた。
「やるしか、ない」
　小枝はゴアラの尻尾を両手で掴んだ。
「必殺、ジャイアントスイーング」
　尻尾を力任せに持ち上げて、自分を中心にぐるぐると振り回す。
　思ったよりも、ゴアラは軽かった。
「来た場所へ、戻ってっ」
　尻尾を離すと、ゴアラの体は海の方へと吹っ飛んで行く。
「はぁ、はぁ」
「まだユカ！」
　ミニユーカリスの言葉通り、海からゴアラが復活してきた。
「ヤツの弱点はおでこユカ」
「そうなの？　だったら」
　まだゴアラはふらふらしている。チャンスは今しかない。
　小枝は拳を握りしめ、駆け出した。
「ゴアラ、覚悟ーっ！」
　ゴアラの数歩手前で地面を蹴った小枝は右足を突きだした。
　そして、落下の勢いを利用し、ゴアラの額に靴底をヒットさせたのだった。
「きゃおおおっんんっ」
　さらに吹っ飛んだゴアラはそのまま動かなくなり、その体はすうっと消えてなくなってしまった。
「やったユカー！」
「か、勝った？　……すごい、勝ったー！」
　喜んだのもつかの間、小枝はその場に座り込んでしまった。
「はぁ、震えた。……このまま、寝られちゃいそ、う」
　小枝はそのまま落ちてしまうのだった。

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