初夏の過ごし方｜リアクション

初夏の過ごし方

「暑い……暑いぃぃ……。まだ初夏なのにどうしてこんなに暑いのー……」

　それはまるで夢遊病者の如く。全身から汗を滝のように流しながらふらふらと歩くのは恵御納夏朝だ。
　普段は無口であまり表情が変わる事がなく、どことなくマイペースな夏朝なのだが本日は違う。あまりにも暑すぎるのだ。

「もう、もう……ダメ……。冷たい物でも買って日陰で休もう……」

　時折道行く人が夏朝に大丈夫か？　というような視線を向けるもそれに気づく余裕はない。
　冷たいお茶とソーダアイスを購入してから、日陰を求めて彷徨う。

　日陰があってゆっくりと休めそうな場所に夏朝は心当たりがあった。
　今いる場所からそう遠くないところにある公園。そこならば周囲に沢山の木々があり、遊具等も多い為に日陰も多い筈だと夏朝は考えていた。

「よーし……。日陰へ、れっつらごー」

　果たして日陰まで持つのだろうか。

「日陰ー……。ひ、か……げ？」

　公園についてみれば夏朝の思った通りに過ごし易そうに見える。早速日陰の濃そうな場所へと移動するもそこには先客の姿があった。
　それはふわふわでふにゃふにゃな先客。つまりは猫である。一匹や二匹ではなく、それなりの数が日陰で休んでいる。

　直ぐ近くまで夏朝がやってきていると言うのに、猫達に逃げる気配はない。だらーりと身体を伸ばして寝ているところから見て、この涼しい空間から逃げたくないのだろう。

「そっか。猫さん達も、暑いもんね……」

　寧ろ猫達は自前の毛皮を脱ぐ事が出来ない分だけ暑さに対しては人間以上に苦労するだろう。人間とて、外では服を脱ぐ事は出来ない事に変わりはないが。
　だが、夏朝とて涼しさを求めてここまで来たのだ。猫達とくっつかずにすむように、スペースが空いてる所を探してそっと座る。

　普段ならば猫好きの夏朝は自分から猫を撫でにいくところだ。
　しかし、本日はとても暑い。それ故に猫達が暑がるかもしれないと撫でに行くのは自重する事にした。

　――のだが。どうやら猫達は夏朝の事を警戒しなくても良い人間だと判断したらしく、何匹かが夏朝の傍へと寄ってきて甘える。

「あぁ、可愛い……」

　猫の方から寄ってきてくれたら流石に我慢し切れるわけがない。夏朝はふにゃっと笑って猫を撫で始めた。

　日陰の中で夏朝と猫達の間にゆったりとした時が流れる。
　夏朝はカバンからイヤホンとスマホを取り出して耳に装着。スマホの中に録音しておいた教科書の音読を聞いて勉強を始める。

「休日はバイトにあてる事が多いから、隙間時間で少しでも頑張っておかないと」

　今年の夏朝の目標として全教科80点、いや、90点以上を目指している。それ故に日ごろから勉強をこうして頑張っているというわけだ。
　しかし、今日のような暑い日に集中し切れるかどうかは怪しいところだ。その上、ここには夏朝大好きな猫が沢山いるのだ。

「あぁ、猫さん可愛いなぁ……」

　このような呟きが漏れるようでは駄目なのではないだろうか？

「猫さん、移動するところも可愛い……」

　時間が過ぎて変化する日陰の位置と共に猫達もまた位置を変える。
　その姿を見た夏朝の感想がコレである。普段から猫が可愛いとは言うが、それにしても暑さのせいかいつもよりも語彙が大変な事になっているのではないだろうか。
　しかし、そんな事は関係ないとばかりに夕暮れ時近くまで夏朝はその場で猫を鑑賞しながら勉強を行うのであった。

「それじゃ、また。……明日は涼しくなるといいね、猫さん」

　沢山の猫達に手を振る夏朝。その姿はとても満足そうであった。

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あとがき

担当マスター：昂祈
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昂祈です。
初夏の過ごし方のリアクションをお届けいたします。

皆さんは暑いのと寒いのはどちらが良いのでしょうか？
私はかなり暑いところに住んでいますので、暑いのはかなり平気です。

代わりに寒いところは凄く苦手です。
以前北海道に行った時は地獄を見ました……。

さて、暑い時、即ち夏には夏にしかできない事というのが色々ありますね。
それらに絡めたシナリオというのも今後出来たらなぁと思っています。

それでは、この度のシナリオにご参加頂きありがとうございました！
またのご機会ありましたら、是非よろしくお願いします！

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