初夏の過ごし方｜リアクション

初夏の過ごし方

　真夏のような熱暑にあえぐ日であろうとも学生の本分が変わる事はない。つまりどういう事かと言えば、八神修は本日も学生の本分である勉学に励んていたという事だ。
　そもそもの話、大多数の学生と違い修は勉強そのものは苦にしていない。それどころか、知らなかった知識を得て、解らなかった問題を解けるようになるという事にある種の喜びを感じている節すらある。
　
　更に言えば、修には二年の夏までに高校で習う範囲を自己学習により終えるという目標があった。
　その目標が果たしてどこまで達成できているのか？　それを計る為に普段から積極的に模試を受けて達成度の確認をしていたりもする。

　本日とてその模試を受けて、現在はその帰り道であったわけだがふと気づくと前方に見慣れた姿がある事に気付く。
　最近、親しくしている友人である遠藤健だ。

「あ、遠藤じゃないか。何をしているんだ？」
「ん？　あぁ、八神。そっちこそこんなところで何やってるんだ？　確か家はこの辺じゃないだろ？」
「俺？　俺は模試帰りだよ」
「……休みの日に模試を受けたという事をそこまで爽やかに言える人間は、お前の他には多分いないだろうな……」

　何かおかしかっただろうか？　と、修が首を傾げる。健とて勉強は苦手というわけではないが、それでも模試を受けたという事をここまで爽やかに言う自信はない。
　というよりかは、無駄に爽やかすぎるとさえ健は思っていた。

「こんな暑い日に良く模試なんて受けようと思ったなぁ」
「いや、模試を受ける申請をした時に暑いかどうかが解るわけじゃないからね？　けど会場は空調が効いていたから外に出てる今の方が暑いくらいだよ」

　時刻は夕方。そろそろ太陽が沈もうとしており、辺りは赤く染まっている。しかし、そんな時間でも熱の余韻でまだまだ暑く感じるのだ。

「で、遠藤は何をしていたんだ？　ここにいるって事はそっちも出かけていたんだろ？」
「あぁ、今日は友達と遊んだ帰りだよ。バスケとかボーリングしてたんだ」

　なるほどと納得して頷く修。彼の知る健という人物はとても交流が広い印象がある。学校の中でも男女問わず誰かと話したり遊んでいたりする姿を見かける。健が一人でいるところは滅多に見ないような気さえするのだ。
　だから、こうして休みの日に友達と遊んでいるというのは、とても納得のできる話であった。

「健って休みの日とか何をして過ごしてるんだ？」
「え？　うーん……。これと言って何か特定の事をしてる事はないかな？　友達と遊ぶ事も多いけど、家でゲームしたり漫画読んだりしてる事もあるよ」

　要は自分が雑食なのだと語る健。楽しければ何でも良いし、割と何でも楽しめる性質なのだと。だからこそ、割と様々な事に手をだしていたりするそうだ。

「そう言えば、ここにいる理由は解ったけど何でこっちに歩いて来てるんだ？　帰るなら方向が違うんじゃ？」
「あぁ、この近くにある神社に寄るつもりだったんだ。隅の倉庫が猫の為に開放されてて、そこが猫のたまり場になってるんだ」
「猫？　あぁ、そう言えば八神は猫が好きだったな」
「普段から時々エサとかタオルを差し入れたり、掃除をしているんだよ。他にも同じように世話しに来る人がいるから皆人間に慣れていて可愛いぞ」

　なるほど。それならば猫達もわざわざ遠くに行くという事はしないだろうと健は思った。
　ご飯を貰えて、雨風がしのげる場所がある。野良猫にとっては最高の環境と言えるだろう。

「何て言うか、あれだな。リアル猫カフェ？」
「はは、確かにな。遠藤も一緒に行ってみるか？」
「ふむ、そうだな。どうせだしそうするか」

　日が暮れていく中、二人の影が伸びる。健と修はそのまま猫達の元へと向かうのであった。

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