携帯戦記カプセルギア　外伝　ダンサーズ・クリスマスキャロル！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝　ダンサーズ・クリスマスキャロル！

急：イベントは最後まで楽しむべし！

　大盛り上がりで幕を閉じたレイドバトル。その様子は大きなモニターで映されており、参加していなかった人々の目をくぎ付けにした。
（これだけ盛り上がるとはな……）
　歪屋チヒロは敗北し、子供のように泣くキメラ―ιをあやしながらも、周囲の熱気を肌で感じ取っていた。
「あっ……」
　その様子を見ていた環的子は、チヒロが自然と笑っている事に気付いた。デッドエンドの際は苦しげな表情を見せたこともあったためだろう、的子はチヒロがちょっと気になっていた。
（こんな風に、笑えるんだね）
　しばし呆然となっている的子の頬にネオムが触れる。我に返り、チヒロを見ると彼（ないし彼女）が恥ずかしそうに的子とネオムを見ていた。
《くやしぃ、ぼく、つぎ、かつ！！》
《そうか……。ギアマスターとの相互理解は大切だ。思考能力や感情があるのなら。何をどう考えているのか、どうしたいのか、互いに正面から腹を割って話し合うと、何か掴めるかもしれないな》
　ネオムが穏やかに答える。的子はそんな掛け合いがなんとなく面白かった。
「あのっ、歪屋さんは今、カプギア楽しめてますか？　……前。何か苦しそうな顔していて……」
「……実を言うと、久々に、カプギアを楽しめたよ。ありがとう」
　チヒロの口元に自然な笑みが浮かぶ。的子は「いえ……」と僅かにはにかみつつも、思いを口にした。
「歪屋さん、行き詰ったら遊びましょう！　勝っても負けても楽しいバトルで。私、いっぱい受けて立ちますからっ」
「勝っても負けても楽しいバトル、か……」
　的子の真剣で、楽しそうな顔。それにつられ、チヒロもまた口元を綻ばせる、もう一度頷く。しかし、すっ、と表情を曇らせた。
「ユグドラシルの一員である限り、それは許されないだろう。だが、役目を終えたら……、君たちとそういうカプギアをもう一度したいな」
「え？」
　的子は、どこか寂し気なチヒロの言葉に息を飲んだ。
　チヒロはそっと仮面をはずし、的子にウインクした。そこに現れた顔に少女は僅かに息を飲んだ。

＊＊　＊　＊　＊

　レイドバトルも終わり、次は新パーツ紹介とアニメの制作発表である。スライドショーと、デモ映像をつかった説明会ではあったが実際にそのパーツを使ったギアに触れることもできた。
（うーん、ファンタジーっぽい感じのとかスチームパンクっぽいのとか……いい感じだけど……）
　潮見原重工の新作がなかったことがちょっと残念だなぁ、と思いながら話を聞く仙藤蒼の傍ら、鷹司凜太郎とスピカ・フォーツは気になったパーツがあったのか、色々熱心に見ていた。
（どんな年齢でも楽しめるような工夫がされてるんだね）
　当初は「小学生向けのイベントかな……？」と少し不安になっていた稲積柚春ではあったが立食パーティーで用意された物やら説明書やらからそんな風に感じ、リラックスした様子でイベントを楽しんでいる。
　アニメについては主役を演じる声優も登場し、ちょっと盛り上がっていた。不思議なカプセルギアと少年少女たちの友情と悪の組織との戦いを描いた物で、蒼は「そこそこいけそう？」なんて思いながら軽食を口にする。
「アニメに出るカプギアのパーツも販売になるんやな。しかも実際にあるトコの監修やて！」
「ちょっと気になる……かも？」
「うんうん！　何時からの放送かしら？」
　牛瀬まことと的子、黒江ナオがちょっとわくわくした様子で話し合っている。その後ろで白真白と桜庭円がパンフレットを見ながらどのパーツを購入しようか話し合う。
　参加者たちがそれぞれ楽しんでいる様子を、チヒロは少し眩しそうに見つめていた。そのどこか遠くを見る眼差しに気付いた者はいるだろうか？
（いつか、また。あのような目で世界を見ることが叶うのならば……）
　チヒロはどこか寂し気に笑うと、マイクを手にした。
「それでは、最後に……お楽しみ抽選会を行う。入場時に配ったパンフレットに番号が振ってあっただろう？　それが抽選券だ。特賞は新作パーツの特殊カラーリングセット+アニメのプレミアム試写会招待券のセットだよ！」
　チヒロは、盛り上がる会場に目を細めながら、内心で小さく呟いた。
（君たちのギアバトルで私を超えろ。そして……ユグドラシルを……！）

＊：　＊　：　＊

　お楽しみ抽選会が終わり、イベントはお開きとなった。その帰り道、蒼はレイドバトルでゲットした物とは別に、お楽しみ抽選会でゲットしたアイテムを手にくすぐったそうに笑っていた。
（例のアニメに登場するマスコットのぬいぐるみ、かぁ……。ちょっと照れちゃうな）
　そう思いながらも、己のギア・Diablo Azulと共に戦ったレイドバトルの事を思い出すと思わず頬が緩んだ。

（そういえば……）
　帰り道、何気なく己のギア・ворが話さなくなったことに気付いた柚春は、カバンからворを取り出して小さく微笑みかけると「今日はありがとう」と話しかける。そうしながらも、脳裏に浮かんだのは一人の青年。最近よく見る夢に出てくるのだ。
（ふふっ、夢の彼に話したい事ができたな）
　柚春が口元を緩めた時、なぜかворも笑った気がした。

　こうして、とある日の夕暮れは過ぎていく。
　だが、またいつか……カプギアがひとりでに動き、話し出す日がくるかもしれない。

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

大変お待たせして申し訳ありません。
菊華です。

今回は、皆でイベントを楽しもう！　という訳でレイドバトルをご用意しましたがいかがだったでしょうか？
アクションの都合、ほぼ砂地での戦闘と相成りましたが……（せっかく水辺用意したんですけど……：汗）

少しでも素敵な一日のお手伝いになれば幸甚でございます。
それでは、今回はこの辺りで。縁がありましたら宜しくおねがいします。

菊華　伴

おまけ
今回は参加してくださった皆さんにこちらのプレゼント。

称号：カプギア・クリスマスキャロル
取得：新発売となったカプギアのパーツ詰め合わせ（ご自由に設定してください）
　　　シーサイドアウトレッドで使用できる商品券

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