携帯戦記カプセルギア　外伝　ダンサーズ・クリスマスキャロル！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝　ダンサーズ・クリスマスキャロル！

《私たちとキメラ―ιの距離は？》
《およそこれぐらいかと》
　ネージュリェーツの問いに、トライアルγが情報を送る。その間にもぎりぎり射程から離れていたベレロフォンが矢を放ち牽制し、動きが鈍いながらもブルズがスモッグでキメラ―ιの視界を塞ぐ。
「ぎりぎり射程内？　やっちゃうかな！」
「こっちも、仕留める」
　真白とスピカの動きがシンクロする。ネージュリェーツがキャタピラへとヤドリギを放ち、芽吹かせている間にトライアルγがチャージを進める。
「この位置でも、十分行ける！　ネオム！」
《！　時間を稼ぐ！！　合わせろ、Bop!　 Diablo Azul！》
　低下した機動力を己の総スピードを一定時間向上させる機能でカバーするネオムは、的子の声で気合が漲るのを感じていた。
《素敵だろう？　魂に……焼き付けろ！！》
《ここで、仕掛けるならばこれでしょう》
　尾を狙いプラズマカノンを放つネオムの後ろから、Diablo Azulは砲撃後肩の無反動砲をパージすることで機動力を補い、バズーカ砲で援護する。Bopは無言でその砲撃の間を縫い、キメラ―ιの蛇を狙う。パチンコの玉が蛇の口にはまり、音波の発信が止まった。プラズマカノンとパチンコのお陰か、あと少しで蛇を切除できそうだ。
《ふんっ、借りは返したつもりだぜ、ネオム》
　Bopがふん、とそっぽを向きながら言うも、視線の先には柚春がいる。彼女が「がんばって！」と応援してくれるからこそ、己はここまで戦えるのだ、と僅かにほほ笑んだ。

蜃気楼、熱を操り幻影に
炎を操り質量を持った剣とせよ
幻影の剣よ質量を持て

　虚空に響く朗々とした詠唱。円とベリアルの声が重なり、ビットが舞う。牽制している間にブースターから炎をまき散らしながら接敵し、幻影剣で翼を大きく傷つける。ペイント弾はバリアで庇い、身を翻すと蛇を掴み引き延ばした。
《そらっ！　これなら狙いやすかろう！》
《おっと、オレを忘れてもらっちゃ困るニャ》
　爪で切りかかるスカルブーティ。彼は機動力を低下させながらもキメラ―ιの翼の根本へと切りかかる。派手に傷つければ……！
「目印にできるはずよ、お兄さん♡」　「やっちゃえ、やっちゃえ！」
「任せろ！」
　凛太郎はナオと円へと親指を立てて頷くと、スピカを見やる。どうやら、そっちも準備万端らしい。2人はびっ、と指をキメラ―ιへと突きつけた。
「ベレロフォン、最大出力」　《御意！》
「チャージ完了。……放て！」　《ロック……ファイア！》
　ベレロフォンが光矢を、スカルブーティがつけた傷目掛けて放つ。同時にトライアルγが複数もある圧縮波動砲を放ち、加速した翼で蛇を切る。同時に巻き起こる火の粉。ベリアルの魔法剣だ。
「残さず斬らないと、ね！」
　ベリアルが円の声に答え、剣を振るう。だが、キメラ―ιはぐるん、と身体を振り回し、ベリアルを切れかけの翼で叩き落とす！
《まだ、やれる！！　つぶれろ！！》
《ぐっ！》《やらせないっ！》
　トライアルγがデコイで庇い、ブルズが二人纏めて安全地帯へと移動させる。その間に、ネージュリェーツが狙いを定めた。
「今や！　真白さん！！」《やってやれ、ネージュリェーツ！！》
　まこととブルズに励まされ、真白はにぃ、と笑う！
「皆の攻撃でだいぶダメージがたまってるみたい！　さぁ、今だよネージュ！」
《エネルギー解放！　ターゲットロックオン！　必殺のバーストショット!》
　キィィィン、と空気が張り詰め、放たれる、光の本流。それが消えた時、がしゃん、と音を立ててキメラ―ιから白旗が上がっていた。

「ここまで、だな……」
　チヒロが、そう言いながら拍手をするとけたたましいアラームが鳴る。どうやら、勝負がついたようだ。
『これまで！　勝者、ユニットチーム！！』
『見事キメラ―ιに勝利したレイドバトル参加者の皆様には、後ほど商品をプレゼントさせていただきます』
　館内放送で我に返った一同は、ようやく勝利した実感を覚える。ネオムを迎え入れた的子の笑みに、ネオムは１つ頷いた。
（あぁ、マトコはホントに……私を、私以上に理解している）
　何かが満たされ、満足げにしているネオム。そんな１人と１機を何となく羨ましく思えた柚春だったが……Bopがそっと彼女の頭を撫でた。
《がんばったな。ありがと》
「！　ふふっ！　こちらこそ、ありがとね」
　柚春の言葉に、Bopはくすぐったそうに笑った。

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