＜零神探訪＞紅燈火街（レッドランタン・タウン）｜リアクション

＜零神探訪＞紅燈火街（レッドランタン・タウン）

●終息

　メイユたちが立ち去った紅火楼。窓は破れ、天井には穴が空き、散々たる有様である。
　ユチェンの沈み方は、さらに散々だ。
「まったく……」
　如月庚はため息一つつき、項垂れるユチェンの頭を鷲掴みにした。
「振られたか？」
「……振られて、ない」
「振られてない……か。女ってのはわからん生き物だ。お前次第じゃ、また機も巡ってくるだろ」
「あー如月君がなんか語ってますよー」
　茶化す梢を庚は無視して、ユチェンの頭を掴む手に力を籠める。
「それより。てめぇの気持ちがどうだろうが、俺たちは異変を解決し仲間を助けるという依頼を果たした。申海波老人と引き合わせるってえ約束、忘れちゃいねえだろうな」
　ユチェンは明日、夜が明けたら、申海波のところに皆を連れて行くと改めて約束した。
「結局、今回の異変は、神魂を宿した珊瑚玉が、メイユさんの心と共鳴し合って起こった悲しい事件ってことなのかしら」
　ブリジット・アーチャーはシャンデリアの欠片を拾い上げ、ひとりごちる。
「でも、まだもやもやするなあ」
　桜庭円は頭を掻きむしる。小山内海も小首を傾げる。
『この異変って、零神像と関係あったの？』
「ごめんなさい、関係はあった……。実は、あの珊瑚珠は、君たちが捜している像の一部だったものなんだ」
　ユチェンが小さく詫びる。
「えっ、どういうこと？」
「珊瑚珠は神像が持っていたもの。……とある事情でオレのものになって、オレがメイユにあげたんだ」
「とある事情って？」
「詳しくは、ハボ爺のところで、話す」

◇

　夜はずいぶん更けていた。その夜は、隠れ家で雑魚寝して休むことにした。
　途中、大通りの麻婆豆腐の屋台に寄った。
　屋台はもう閉まっていた。
　武道は心の中でオヤジに礼をいい、鉄鍋を屋台に立てかけてきた。
　梨香とリンコは、瓢が煽った『火祭り』の賞品代を払った。四角い武器屋で切った小切手の額よりはささやかだったが、梨香が（骨削君、絶対に今度返してもらうわよ）と心に誓ったのは言うまでもない。

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