【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～｜リアクション

【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～

■20時、貫徹勉強会、開始

　檜扇唱華がピッツァとクッキーを焼き終えた頃、旅鴉月詠もまた準備を完了させた。
「唱華、舞華。離れて」
　姉妹が旅鴉から離れると、旅鴉はスケッチブックを開いた。
　そのページには既に何も乗っていない皿の絵が描かれている。
　旅鴉のスケッチブックの絵の中に、手作りのピッツァとクッキー、そしてＰコーラやスナック菓子などが吸い込まれていく。
　彼女のろっこん『絵空事』の効果で食料が次々に封印されていった。
「うむ、吸引力（物理）は健在だな」
　絵の皿の上に山盛りとなった食料の“絵”を見て満足する旅鴉。
「月詠様の能力って便利よね。収納スペースに困らないもの」
　感心する舞華同様、唱華も静かに頷いて同意を示す。
　この姉妹、『ひと』ではあるが『もれいび』や『ろっこん』の事を主から見て聞いて知っているのだ。
「とはいえ、ろっこんの効果がずっと続くとは限らない。すぐに出発しよう」
　旅鴉はすぐさま唱華の車に乗り込む。
「舞華は留守を預かってほしい。星ヶ丘寮の差し入れは任せた」
「舞華ちゃん、よろしくお願いします」
　２人は一路猫鳴館へ向かう。
　その車の後ろを見送りかながら、舞華はしゃんと背筋を伸ばして美しく一礼。
「いってらっしゃいませ」
　車を見送った舞華は、星ヶ丘寮への勉強会参加者へ差し入れを提供する準備に取り掛かった。

　後木真央はジャージに着替え、入念なストレッチを行っていた。
「これはっ……、新聞部幽霊部員の血が騒ぐのだ、他寮徹底取材なのだ！」
　各寮が同じ日に解放されるイベントは滅多にない。
　彼女は己の足で全ての勉強会会場を取材しようと目論んでいるのだ。
　デジカメと携帯を握り締めて気合を入れる後木。
「真央ちゃんはテスト勉強出来ないとか、関係ないのだー！　きっと赤点３個以上は部活停止や夏休み強制補習なのだ。新聞部幽霊部員の直感なのだ。でも、真央ちゃんは赤点を２個までで抑える秘策があるから平気なのだ！」
　ある意味、コペルニクス的発想と言えるだろう。
　上に登るのではなく、下に落ちないように気を付ける！
　ポジティブシンキングって素晴らしいよね。
「それじゃ行くのだ！　体育科の脚力なめんなし！」
　夕焼けをバックに、ランナー後木、いま桜花寮へ向けてスタート――！！

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