【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～｜リアクション

【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～

【10】

「おき、て……朝、だよ？」
　緋紅朱赫乃がラウンジで寝こけている面々を起こして回っていた。
　彼女は午前５時に早起きをし、実家から“持ち込んだ”薔薇園の手入れをしたあと、メイド達と一緒に朝食の準備をしていたのだ。
「ほら、今日は、テスト、だから……遅れず、いこう？」
　彼女に起こされて、寝ぼけ眼で朝食の席に着く面々。
　昨夜は即興ミュージカルで体を動かしたせいか、変に目覚めが悪い気がする。
　中にはナイトランで筋肉痛とか、勉強しすぎて容量がパンクしそうな人もいるようである。
　そしてやたらイチャつく者も……。朝から甘い砂糖の香りが充満していく。
　食卓には、緋紅朱が用意したトーストとバター、薔薇のジャムが備えられていた。
　今の勉強会参加者には、緋紅朱が天使に見えることだろう。

「よし」
　旅鴉月詠は全ての勉強会場を巡り終わったあと、自室のアトリエで総復習を行っていた。
　そして早起きをして、再度補強を行い、準備万端。
　前日の充実感を噛み締めながら、彼女は檜扇メイド姉妹に朝食の準備を言い付けた。

「おーっほっほっほ！　おはようございまーす！」
　財前華蓮、朝からテンション高い。
「朝５時の早朝勉強でテスト対策は完璧ですの！　やはり勉強は早朝に限りますわねー！」
　おいおい、この勉強会の趣旨を根底から覆したよ財前さん！？
　彼女の後ろを歩く剣崎エレナは寝違えたらしく、しきりに首を摩っていた。

「No badね。悪くないわ」
　ブリジット・アーチャーがようやく新井すばるの発音を褒めた。
「あー、よかったー。おつかれー。それじゃあ、朝食食べようか？　薔薇のジャムなんて珍しいね」
　新井は過酷な発音練習で自信を得たのか、１人だけ元気ハツラツである。
「新井さん、苦労していたのに元気だな……」
　桜月は彼へ珍獣を見るかのような目を向けたのだった。

　そうこうしているうちに、他の寮生も集まり始める。
　さぁ、みんなで朝食を食べよう。
　ちゃんと中間テストで一夜漬けの効果を発揮できるように。

「「い　た　だ　き　ま　す　！」」

＜星ヶ丘寮編・了＞

執筆：焼きスルメ