【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド

　それは、罠というにはお粗末すぎた。
　大きな籠に紐が括りつけられたつっかえ棒、籠の中にはキンキンに冷えた生ビール。そして、焼いたスルメ。
　でかでかと『生中、無料サービス中！　今ならおつまみ付けちゃう♪』と張り紙。
　紐の先は生い茂った植木の中に続いており、その中から黒髪ポニーテール少女が目を光らせて待機していた。
「さぁて、罠のセット完了！　いつでもおいで、ステラちゃん！」

　もうお察しの方もいるだろう。
　響タルトである。
　完全にアホの子である。
　上空で見守っていたクリメントもコメントに困るほどのガッバガバの仕掛けだった。
「……私の思い違いでしたか。さて、次は何処を探しましょうか……？」
　その場を飛び去ろうとした、その時だった。

「ビールの匂いなの～！！　しかも焼いたスルメの香ばしい香りもするの！　堪らないの～！」

　ガッシャァーンッと窓ガラスを突き破って籠の中のビールに全力で吸い寄せられていくアホの子が居た。
　その手足は何故か縛られている。
　つーか、なんだよそのダイハードなエントリー！？
　おちおち生ビールも飲めないな、この城は！！
「ス　テ　ラ　ち　ゃ　ん　キ　タ　ァ　ァ　ァ　ァ　ァ　ァ　！！！」
　響、大興奮！
　すかさず紐を引き、アホの子２号（ステラ）の頭に籠が落ちる！
「ぴゃぁぁぁぁーっ！　いきなり真っ暗になったの！　狭いのっ、暗いのっ、誰か助けてなのーっ！？」
「っしゃああああああああああァッ！　金貨五千枚ゲットォォォ！！」
　見事に響はステラの捕獲に成功！
　対して、罠を仕掛けたアホの子と塔の精霊のアホの子を目の当たりにしたクリメントは混乱した。
「えっと、私、結構頑張ったんですよ？　なのに、えぇ……？？」
　うん、君は良くやったよ、クリメント。
　でも、ステラは大のビール好き！　これは外せない重要アイテム！
　やみくもに飛び回るよりも、ビール片手に空を飛んでいれば、もしかしたら出てきたのかもしれない！！
「あれ？　空飛んでる人がいる！　キミもステラを探しているの？　ごめんね！　僕が一番乗りだよ！」
「え、はぁ……。まあ、私が賞金稼ぎにならずに済みました」
「どういう事？？？」
「あ、此方の事ですので、お気になさらず。それよりも、ステラを助けましょう」
「そうだった！　ステラちゃん、今助けるよ！！」
　とにかく、２人の手でステラは救出された。