神の森、寝子島｜リアクション

神の森、寝子島

　　　エピローグ

「よく寝たなあ」
　龍目豪はうーんと伸びをして布団から飛び起きた。まるで一日中、外で遊び回ったような疲れがどこかに残っている。だが、不快ではない。むしろ心地よい。
　昨夜は夢の中でターザンになって、山の中を駆け回っていた――なぜか相棒は熊だったが。探検部だった豪にとっては、この上なく幸せな夢だった。
　目覚ましが鳴るより早く目が覚めたのも、その充実感ゆえだろう。
　スマホに手を伸ばした豪は、そこで硬直した。
「？？？」
　日付は、日曜日を示していた。
「土曜日どこ行った！？」

　同じ頃、雅樹は巧の部屋にいた。
「まさか男と夜明けを迎えるとは。しかもお前と」
　よく分からないが、嘆いている。巧はすみません、と謝った。
「……まあどうやら、戻ったらしいな」
　夜明けと同時に、島中にあった木々は、光の泡となり溶けていった。
　そしてテオは、世界を元に戻した。
　元の寝子島にいた人々にとって、昨日はごく普通の土曜日だったらしい。ニュースでは、特に異変を告げる様子はない。
　代わりにネットでは、昨日のことがちらちら噂になっていた。
　多くはパニックになりつつも状況をあっさり受け入れ、サバイバル生活を送っていたそうだ。テオの助言通り、九夜山に向かった者もいた。ただし、目的地には着かなかったようだが。
　莉鳥からメールが届き、ユウ、萌、修も下山したという。まずは一安心だ。
「で？　お前何で、あんなところにいたんだ？　それもあんな格好で」
　巧はTシャツに短パン、クロックスサンダルという雅樹以上の軽装で捕まっていた。さすがに雅樹も呆れた。
　大方、パニックになったクチだろうが、と思ったが、
「……緑だらけになったから、もしかして、あっちの世界と繋がったかと思ったんだ」
　少し前、雅樹は巧たちと一緒に別世界で冒険をした。そこは緑の世界だった。巧は、島が植物だらけになったのを見て、その世界に行けるのでは、と考えたのだった。
「で、取り敢えず、山に行こうと思って、落とし穴に落ちたところまでは覚えてる……」
　パニックになったところは、当たりらしい。
　そうか、と雅樹は言った。
「次行くときは、もう少しちゃんとした格好にしとけ。それと」
　次の言葉は躊躇った。だが、ままよとばかりに口にする。
「一人で動くな。お前は固まるしか能がないんだから。声を掛けろよ。……俺か椎井にさ」
　巧は大きな眼鏡の下で両目をぱちくりと瞬かせていたが、しばしその言葉の意味を考え、そして、
「――うん！」
　嬉しそうに返事したのを見て、雅樹は言うんじゃなかったかな、と後悔したのだった。

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あとがき

担当マスター：泉楽
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お待たせしました、「神の森、寝子島」リアクションをお届けします。
九夜山を中心に起きた変事。緑の寝子島。
どうにか解決したようです。もっともクヤ族など、分からないことも残っていますが。
リアクションにもありますが、切り離された元の世界にいた人にとっては、いつもの土曜日でした。そうでない人には記憶があります（一部、例外あり）。
他の場所でどんな物語があったか想像すると、ちょっと楽しいです。

それではまた、別のシナリオでお会いしましょう。

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