パンツ、落としました｜リアクション

パンツ、落としました

●パンツ落としたので乙女が恥じらっていますが、男達は暴れています

　そんな紳士たちとは、離れた場所で。
　スピカ・フォーツもまた、落としてしまった下着を探していた。
「うう、嫌な予感はしたけど……恥ずかしい」
　たった一枚ないだけで、こんなにも落ち着かない気持ちになるなんて。
　不自然とは思いつつ、ついスカートのお尻を、押さえてしまう。
　だが、こんな動きをしていたら、隣にいる恋人、鷹司凜太郎に、ノーパンなのがばれてしまうだろうか。
　スピカはちらと、彼を見上げた。
　そして、普段は落ち着いている彼の、ちょっとした違和感に気づく。
「もしかして、リンタロウ、も……？」
（パンツ、はいてない……？　二人そろって、こんなこと……）
　見られたわけではないけど、恥ずかしさはマックスで、スピカの頬に、熱が集まる。
　しかしそのくせ、胸はドキドキと激しく打っていた。
（私、どうなってる……？　リンタロウ、何か、言ってほしい……）
　見つめあう、高校生のピュア男女。
　だがその沈黙を、打ち破る者があった。
「困っているなら、このレインボーパンツを使えよ。　なあに、男性用も女性用も、しっかり用意している」
　スピカは、いきなり目の前に差し出されたパンツと、それを持っている竜司に、思い切り顔をひきつらせ、固まった。
　好きな人とそうではない人。パンツの話題で、ときめけるのは前者のみ。
　他人には、超えてはいけない一線はあるのだ。

「……どこで脱げた？　いや、脱げるもんでもなくねェ！？」
　七峯亨は、大きな声を出した。
　服はしっかり着ているのに、パンツだけ神隠しなんて、不思議にしたってほどがある。
　それに亨は、バイクで星の交換所に行った帰りなのだ。
　日にあたったシートは熱々。ノーパンで乗ったら、いくらジーンズはいているとはいえ、大事なところがほっかほか、悲惨なことになってしまう。
　考えるだけで恐ろしいと、亨はぶるぶる首を振った。
「ほんとにどこで消えた？　俺の下着……」
　まさか誰かに聞くわけもいかず、バイクを引きながら、ひたすら地面を見つめて十数メートル。
　声をかけてくる者があった。タッマーキである。
「恐れ入りますが、このあたりで紫レースのパンティーをみかけませんでしたでしょうか？　スッケスケなのですが」
「紫レースの、スッケスケ……？」
「ええ、大事なところはもちろん透けておりませんが、周囲は大胆な薔薇モチーフが編み込まれ、後ろはTバックに……」
　つらつらと語られるパンティーは、何とも妖艶優雅なものだった。だがそれを具体的に想像しかけてしまいそうになり、亨ははっと息を止める。
（だ、だめだ考えるなっ！　それをはいているのはこの男なんだぞ！）
「いや、見てねえしっ！」
　雑に答えて、バイクを持ったまま、どんどん先を進んでいく亨。
「……人に自分のパンツのことをあんなに細かく語るなんて……優男なナリして、猛者だな、あいつ」
　いや、自分もそのくらいしないと、パンツは見つからないのか。
　なにせここは、落とし物が専売特許の通り道……と考えた。

　――タイミングで。
「いやあん、ここにも素敵男子が一人っ！」
　くねくねとしなをつくって歩いていたミッシェルは、前から向かってきた亨を見て、歓喜の声を上げた。
　実はこのミッシェル、本当は落としてしまった愛らしいピンクのパンティーを探している。だが、美男を見れば、構いたくなるのが、ミッシェルの常。
「うふふ、行くわよっ」
　狙うはプリ尻でも、素敵なソーセージ（仮）でもない。今度はもっと直球、谷間に咲く一輪の菊だ。
「ああん、あの男らしさの中にある、可憐で高貴な花が欲しいのおおっ」

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