全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第一区間）｜リアクション

全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第一区間）

　その前に、【鹿】チームはどうなったかというと？
「響は太刀魚コスでマガレは人魚（笑）か。そして俺がちくわ。ＳＮＳ映えしまくりだな。まるで寝子島の回るお寿司やー、みたいな？」
「ちくわは寿司ネタじゃねぇだろ、高杉？」
「はいはい、おふたりとも、魚新に着きましたよ？」
　比較的ゆっくりとしたペースで目的に到着していた。
「それにしても、響君？　私の肩に回して手の手つきですが……」
「え、あ、なんか、まずかったか？　もっと上を掴むべきだったとか？」
「いえ、持つならもう少ししっかり持ってもらえます？　ちょっとこそばゆいので」
「お、おう……」
　ダメ出しを喰らってしょげる響。
「おーい、早速だが宣伝を始めたいんだが」
　高杉がちくわくん姿のまま、ちくわを器用に食べていた。
「いきなり共食い！？」
　響のツッコミが全世界に配信された瞬間である。
「魚新名物の美味しいちくわ！　新鮮な魚介類は地元の海で獲れたものばかり！　美味いぜ！」
　高杉の宣伝に、マーガレットも手を振って花を添える。
　響は「え、もう始まってるのか？」とテンパって一言。
「よろしくお願いしまひゅ！」
「今、噛んだな？」
「噛みましたね、響君？」
「うっせーな！　緊張してんだよ！」
　なお、このグダグダな様子も世界へ配信されてしまっている。
「で、高杉。ここにもうひとつ、オススメスポットがあるって本当か？」
　響が首を傾げている。
　そりゃそうだ、魚屋しか見当たらないのだから。
　だが高杉は余裕の表情。
　なぜならば！
「魚新の裏にある噂のパワースポット『ちくわくん☆大明神』へ祈願する！」
　なんと、同じ敷地内にＳＮＳ映えするスポットがあろうとは！
　他のチームが移動に費やす時間を、一気に短縮が可能だ！
「さて、どのような社なんでしょうか？」
　三人が魚屋の裏手に移動し、マーガレットが奥に伸びる参道をのぞき込む。
　その奥には、申し訳程度に立てられた社に、ちくわくんに似た細長い石が御本尊として祀られていた。
　どことなく、ビリケンめいた形をしているようにも見える。
「え、これだけかよ？」
　響が呆気に取られている。
「ＳＮＳ映えは何処行った？？」
「ばーか、もっとよく見ろ。御本尊の周囲にあるものを！」
「……ちくわしかないですが、高杉君？」
「よく見ろ、マーガレット。ちくわの周りに感謝の言葉がたくさん紙に書かれているだろ？　結構ご利益があるらしい」
　確かに、些細な事から一大事なことまで、解決しましたありがとうとお礼の言葉が連なっている。
「隠れたスポットとしては、絶好の場所なんでしょうね」
「そういう事だ、マーガレット」
　高杉はウィンクして答えた。
「よっし、あとはチェックポイントだな！　けど、高杉、着ぐるみ暑くないのか？」
　響の心配の声をどう解釈したのは不明だが、高杉は「やれやれ」と呆れていた。
「そんなに俺の貝殻ビキニ姿が響は見たかったのか？　分かってるって。みなまで言うな、ゴール直前まで行ったら俺も着ぐるみキャストオフして貝殻ビキニ見せてやるって」
「そんなことを俺は一言もいっぺんも口にした覚えはねぇ！！」
「ぎゃーぎゃーうるせーなー、響は。ほら気合い入れていくぞ」
「話を聞けよ、高杉！！」
　喧嘩しながらもチェックポイントへ向かう三人。
　その光景を眺めているマーガレットの視線がやけに熱っぽい。
（ああ、いいですね。ツンデレ男子と天然ボケ男子のカップリング……！）
　マーガレットは実は腐女子であることを隠していた。
　こっそり腐った妄想を滾らせながら、自家発電でラストスパートを展開する彼女の幸あれ。