全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第一区間）｜リアクション

全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第一区間）

＜鹿＞
　マーガレット・ライカーは後日、参加理由について、このように述べている。
『基本的にはマラソンとか疲れることはあまりしなくないのですが、若い男子二人が肩を寄せ合い汗を流す姿は美しいですし、何よりそれを超至近距離で鑑賞出来るというのならば、参加しない手はありませんでした』
　この時点でやべー理由であることがお分かりであろう。
　鹿チームはマーガレットの他に高杉かようと響蒼留人という面々で参加。
　以前も、この三人は何度か神魂事件に巻き込まれているためか、一体感は他のチームよりも断然高い。
「前回の参加者もいるんだよな。俺たちは全員初参加。先輩たちの胸を借りるつもりで挑んでゆくぞ」
　響は気合充分にメンバーに語り掛ける。
　だが、何故か他の二人は微妙な顔をする。
「響、今は胸の話をしている場合じゃないだろう？」
「セクハラですよ？　響君？」
「胸を借りるって、そういう意味じゃねえよ！」
　天然の高杉、ボケのマーガレット。
　そして過労死（ツッコミ）の響。
　なんたる調和の取れたチームなのだろうか？（遠い目）
「そういえば、第一区間はＳＮＳ映えらしい。コスチュームは持ってきたか？」
　高杉は背負っていたナップザックから、ちくわの被り物を取り出した。
「知り合いから、是非宣伝を兼ねてと頼まれてな。マスコットキャラのちくわくんコスだ」
　魚屋『魚新』のキャラならばかなり目立つし、ＳＮＳ映えするだろう。
「俺はそういう事はよく分からねぇから、俺は高杉にコスを任せたんだが、何を持ってきたんだ？」
　響は高杉から渡された衣装を見て、目が点になった。
「なんだ、この銀色の着ぐるみ？　サンマさん？」
「いや、太刀魚だ。響、剣道部だし」
「これも魚新の宣伝かよ！！」
　御明察、と言わんばかりに高杉は笑顔を返した。
「……まぁ、バニーでなければ俺は文句は言わねぇけど」
「おふたりとも、お似合いですよ」
　白のワンピと麦わら帽子を被った、星ヶ丘にいそうなお金持ちのお嬢様っぽい格好のマーガレットが賛辞の言葉を贈った。
「そういうマーガレットは、何の衣装を持ってきたんだ？」
　響の問いかけに、マーガレットはドヤ顔で答える。
「私は人魚が人になった姿のコスプレです。映えというなら、あまり珍妙な恰好はしたくありませんから、ここ海にちなんだもので人魚という結論に至りました」
「普段着じゃねぇか！」
「失礼ですね、響君。ちゃんと人魚っぽいアイテムとして、ちゃんとイルカのネックレスをつけてますよ。キュイ！」
「いや、人魚なら尾ひれとか身に付けろよ、雑すぎだろ！？」
「足が尾ヒレだと走りにくいですよ？」
　マーガレットの正論に、響は「駄目だこりゃ」と肩を落とした。
「いや、せめて貝殻ビキニとか、それくらいは頑張ろうぜ……？」
「安心しろ、響。貝殻ビキニは俺が装着している！」
「なんで高杉が身に着けてんだよ！？　意味わかんねぇ！！」
　ツッコミのキレが徐々に増す響！
　スタート前に響君が過労死しちゃう！
「響が真ん中で、俺とマーガレットが花になってＳＮＳ映えはばっちりだ。両手に花で走れるんだ、幸せと思えよ？」
「ちっとも嬉しくねぇし！　つーか着ぐるみで見えてねぇ！」
「あら、響君は男性の貝殻ビキニを見たいと仰るのですか？」
　マーガレットの眼光の奥が鋭く光る！
　高杉もやれやれと首を振りながら呆れ返っていた。
「響、さっきから胸の話ばかりだな？　胸ばかりじゃなく、貝殻パンツを穿いてきた俺の気合を少しは汲んでくれよな？」
「既に穿いてるのかよ！　高杉の気合の入りようが斜め上過ぎて付いていけねぇ！？」
「まぁまぁ、響。折角だから一等でバトン渡そうぜ。宣伝は魚新を周る。俺にいい考えがあるんだ」
　ごにょごにょと鹿チームは作戦会議。
「……なるほど、その発想はありませんでした」
　マーガレットは感心している。
「よし、スタートしたら魚新へ一直線だな！」
　響も何とかモチベを取り戻した様子だ。
「ああ、うまく宣伝できたら魚新からちくわ一年分もらえるらしいぜ？」
「そんなにいらねぇよ！」
　やっぱり響はツッコミ役だった。

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