携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』

　バルティーグルが跳躍する。障害物の多い路地にわざと逃げ込んだスターライトナイトを見、《あの２人、やるではないか》と独り言ちて。
《ちゃんと来てる！　次は左から攻撃がくるよ！》
《おう！》
　サニィがバックパックで飛びながらスターライトナイトをサポートする。そうしながらも、彼女はいいタイミングでバルティーグルが迫っているのを猫耳センサーで感じ取っていた。
「いけるっ！」
「上出来だ」
　玲音が合図を送り、タイラは自然と笑顔になりながらバルティーグルを操作。見事γを挟み撃ちに成功する。トリモチバルーンのおかげで姿もわかり、γは腹立たし気に地面をひっかく。
《！　サニィ、下がれ！》
　スターライトナイトの言葉に、サニィが素直に従う。同時に巻き起こる風。スターライトナイトが突進するγの顔面に尻尾を叩きつけたのだ。そして、背後からはバルティーグルの爪撃。γは翼の付け根を深く傷つけられ、身動きが取れなくなる。

「豪爪の餌食となるがいい！」

「いっけええ！　メテオキャノンだ！！」

　吠えるスターライトナイトの口から発射される一撃。かわせるはずがないそれを、γは繊細な動きでわざと翼を犠牲にし素早さを勝ち取ってスターライトナイトに一矢報いようとした。
《これで勝ったと思うなっ！！　一機でも道ずれにしてやる！》
《！　こっちだよ！！》
　サニィが気を引こうとγの顔面目掛けトリモチバルーンを展開。その隙にスターライトナイトは下がり、背後からバルティーグルが遠吠えで援護する。
　そこに降りる影。次こそ仕留めよう、とグリフィージスが爪に捕らえる。もがくγ、急上昇するグリフィージス。控えるのは……ヒョードリ！
「これが、私たちの……ギアバトルよ！」
《これで、決めるぞ》
　グリフィージスが、そのままγをひっつかんだまま急降下。矢の如く落ちるそのギリギリで、グリフィージスが舞い上がる。だが、すれ違うがごとくヒョードリがγへと急降下！　五郎八が眼鏡を光らせ、ぐっ、とこぶしを握る。
「名付けて『ヒョードリ越え逆落とし』！！　……なんてね」
《まるで矢のようだ。やあああああってね？》

　――バキャッ！

　ヒョードリが、流星の如くγへと突き刺さる。鈍い音を立てて、もう１つの翼と足を折ったその一撃に、アラームがなる。それは、γの敗北を告げるものだった。

「お疲れさまです、ヒョードリ」
《これぐらい、朝飯前だよ》
　ひよどりの言葉に、ヒョードリは飄々という。
　そして、サニィもまた見つめる玲音に微笑みかけた。
《レイン、いつもありがとう。私、あなたにあえて、ホントによかったって思うな♪》
　その一言に、玲音は思わず嬉し涙をこぼした。
　少し離れたところではスターライトナイトがバルティーグルにじゃれつこうとしてつっこみを食らっている。
《っと、まだバトルは終わったわけではない。αやβ＆Θの方が気がかりだ》
　グリフィージスが心配そうに言う。加勢禁止のルールなどない。状況に合わせて動こう、と５機と５人は頷き合った。

　――グリフィージスとヒョードリが、γと空中戦を行っている頃。

　αを討つべく集った面々は、派手にぶつかり合っていた。暫くの間はαが逃げ、挑戦者たちが追う展開だった。
《単純明快に、力の勝負と行こうじゃないか》
　αが蹄を鳴らしながら挑発する。しかし、それに乗るMrクラウンではない。

（慎重に、それでいて……大胆に！）

　手に汗握る戦いに心を躍らせながら、新田樹は勝利への近道を模索していた。Mrクラウンは接近戦向きではない。だが、それ故にこの状況への切り札にもなりえる。そう、樹は確信していた。

「ここで仕留める！」
「逃がさへんでっ」
　煌白燕と牛瀬　まことが叫び、彼のギア・ブルズがαの後方に控える。αの前方に立ちふさがるのは、サンゴクナイトだ。しかし、αはそれを無視して突進していく。その視線の先は……環的子のギア・ネオムである。ネオムはマシンガンでブルズとサンゴクナイトの援護射撃を行っていた。だが、αは行動を邪魔するネオムを先に仕留めておこう、と考えたらしい。