サイバテック・バトルフィールド｜リアクション

サイバテック・バトルフィールド

急：それぞれの意地と、それぞれのプログラムと

　048Wは、カラス型が発するシグナルに辟易していた。
（これの所為でみんなの情報に遅延とノイズがあるんだな。俺の動きに……遅延が生じるのも）
　調査は終わった。彼は、僅かにメガホンを握る手に力を籠めるとすぐさま叫んで衝撃波を放つ。

「やられっぱなしなのもなんか、心のデータがざわざわするな」

　彼は消滅しきれず墜落したカラス型を拾い上げると、端子を突き刺して解析する。
（このコードをこうして、こうして……。うん、これでよし）
　彼が情報を弄っていくほどに、カラス型は白くなっていく。再び動き出せば、木馬へと向かって飛んでいく。
「……？　データ、弄った？」
　不意に通信が入いる。その正体は、彼と似たようなことをしていたCode:P.Sだった。彼女は落ちていたカラス型を取り込むと、瞬時に作り替えて木馬へと送り出す。
「あぁ。俺はあのカラス型を作り替えて内側から破滅させるようにしたんだ」
「そっか。うちと同じだね」
　Code:P.Sが僅かに笑った気がして、048Wは彼女に対し、人間的に言えば親近感を僅かに覚える。とある事を閃いた彼はCode:P.Sへと情報を送り込む。
「ふぅん？　あのカラスをそう弄ったんだ」
　彼女はそれだけ言うと、受け取ったデータを咀嚼して、己が組み込んだものをさらに改良し、白い改変カラス型を生み出していく。
「……この辺り、データ片がいっぱいだな。かたっぱしから食べていいぞ」
「言われなくてもそーする。そして、君がくれた情報を元にカラスを弄っちゃお」
　048Wからの信号に、Code:P.Sが了解の意思を見せる。
　こうして、２つのAIの共同作業が始まった。

（ここは俺の領域だ。みんな……出ていけっ！）
　K-403.4はずっとカラス型の対処に当たり続けていく。ウイルス排除、それが役目だと。排除、排除、排除。役目を果たせ、役目を果たせ、役目を果たせ……。
（役目……役目だけじゃない）
　だが、ふいに生じるノイズ。フラッシュバックする影。
（失いたくない…失うなかれ、ダイジな……っ？）
　去来する【感情】に、K-403.4の計算が止まる。ほんの少しのタイムラグが、彼にダメージを与える。
（人が嫌なのに？　っつ……また負荷だ……）
　K-403.4は、霧谷朧の心を読み取っている存在だ。故に基にした情報に相反するものが多いせいか関連するワードについて計算し始めると処理に負荷がかかってしまうようだ。
（……あれ？　俺は……）
　わずかな齟齬。だが、それは彼だけにおこっている物ではなかった。

「ちぇっ……やっぱりウィルスだと単調で集めても味気ないデータしか取れ………ないな」
　２本のロッド型武器でカラス型を相手にしていたCollectが、小さく呟きながら違和感を覚える。
（なんだ今のラグ？　とりあえず次のウィ……ルスに……）
　体の動きが僅かに鈍る。思考が鈍る。その違和感がノイズを呼ぶ。だが、彼は既に予測を始めていた。
（なんだか妨害されてんな……これもあのウィルスの仕業だっていうのか？）
　その予測が正しいのならば……。Collectは即座に周囲の敵を調査する。わずかな齟齬やタイムラグを物ともせず調べれば、カラス型から放たれるシグナルへと行きつく。
（そっか……）
　彼の中で何かが躍動する。人間的な【興味】が、信号となって体に力を与える。

「……面白いじゃん、そのデータもしっかり置いてってもらうぜっ！」

　手にした武器をツインロッドからセイバーへと変形させ、しっかりと打ち据える。カラス型の攻撃をかわし、消去。消去、消去、消去。そこに合わせ、超音波が周囲に広がる。振り返れば、048Wがメガホンでもって攻撃を行っている。
「ははっ、データ、置いてけぇえええ！」
　暴れまわる彼は、ふとK-403.4と視界が重なった。カラス型に群がられたのか、動きが鈍くなっているように見えたのだ。
「04！」
　Collectが獲物を振るって周りのカラス型を消去し、視界をクリアにする。同時に、K-403.4は一気に負荷が無くなった事に気が付いた。齟齬もなくなり、スムーズに敵を排除する。