サイバテック・バトルフィールド｜リアクション

サイバテック・バトルフィールド

破：その木馬を叩け

（↑白いボディスーツは脳内保管してネ↑）

　Ritori027（椎井莉鳥）は主に迎撃を担当する防衛プログラムである。
　彼女は今までに対処した敵性ウイルスの特性から相手を瞬時に判断し、攻撃方法や敵の攻撃に対する対処法などありとあらゆる情報を瞬時に分析していた。そこから最適な対抗手段と攻撃方法を割り出して行動する特性が彼女にはある。
（これが、あのネズミ型とカラス型を統括し、送り出すだけではなくそれらが持ち帰った情報を、何処かへ送り出しているのね）
　答えを出すと同時に木馬型へ攻撃プログラムを放ち、相手の出方を探るRitori027。だが、そのプログラムは鈍い音を立てて弾かれる。これならば、と電気攻撃を放てば、鋭い光が己に帰ってくる。
（ならば穴を探せばいい）
　そう答えを出した時、カラスのようなモノが近づいていた。だが、微妙に様子がおかしい気がする。それに違和感を覚えながらも彼女は次の手を使おうとした。だが、その瞬間に脆弱な部分を感知する。
「あのカラスを得たとたん、動きに齟齬が見られた。そこを狙えばいいのかしら」
　すぅっ、と指さされる入口。鋭い光が撃ち込まれる。わずかながらダメージを受けた木馬の反応に、Ritori027が手ごたえを感じる。
　そんな彼女の目の前で、木馬周辺にカエル型のプログラムが浮かび上がった。同時に浮かび上がる、木馬の弱点域。
「貴女、今まで１人で対処していたの？！　今、助太刀するわね！」
　通信をつないできたのは、木馬の脆弱な場所を探っていたWired Empressだった。サイバーαでもβでもない彼女に一瞬だけ戸惑うRitori027だが、止まっている時間はない。
「……？　援護感謝するわ。攻撃を続ける」
「ええ、どんどんやっちゃって！　私の子分プログラムのカエルちゃん達が護ってくれてるから！」
　気を取り直して木馬へと立ち向かうRitori027を、Wired Empresが放ったカエル型プログラムが援護する。それにより、木馬型が逃走を始めるが彼女たちがそれを許すはずがなかった。
（さてと……木馬さんの居場所は確認っと。ふーん、カメラで視界確保してるのね。うん、良いこと考えた）
　彼女はそれを確認するとささっ、と何かを作っていた。縞々の何か……データバーコードである。それをカエル型プログラムに持たせる。
「はーい木馬さん、これ見て！」
　木馬がそれをカメラで確認した瞬間、動きが僅かに鈍る。
「何を見せたの？」
「カメラで見た画像を強制消去させるバーコードよ。木馬さんのカメラはすっ飛んで視認できなくなってるはず」
　Ritori027の問いにWired Empresが予測を交えて答える。彼女はさらにカエル型を用意し、木馬へと向かわせた。カエルたちはRitori027と共に木馬を攻撃するも、なかなか穴が開かない。
（その隙に、私のカエルちゃん達が潜り込んでマルウェアみたいなことをしでかす……っと、けっこう強固ね）
　カエル型からの反応に、Wired Empresはすぐさまカエル型に命令を下す。
「カエルちゃん！　物量攻撃！」
要するにブルートフォース……力づくである。次々に打ち込まれる文字の中から鍵が当てはまり、徐々に解れていく木馬。そこにRitori027の攻撃が重なり、ついには穴があいた。
「よっし！」
「親玉なだけあって頑丈ね。さて……中から破壊してみるわ」
　手ごたえを感じたWired EmpresへとRitori027が通信を入れる。彼女はそれだけ言うと、穴を押し広げ潜入する。その背中を見送りながら、Wired Empresは現状を味方AIへと通達するのだった。

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