サイバテック・バトルフィールド｜リアクション

サイバテック・バトルフィールド

（さて、そろそろかしら）
　カラス型の動きが変わった。それを知った稼働できるAIたちが対処に当たっている。Collectが獲物を振るい、背中合わせになった048Wが衝撃波で攻撃する。その合間をCode:P.Sが踊り、残骸を取り込んで新たな改変カラス型を生み出していた。防衛システムと同化しているK-403.4はオペレートを行い、敵の動向などを知らせている。
　Code:P.SとK-403.4を破壊する為だろう、どうにかしてネズミ型を呼び出して向かわせる木馬型。しかし、Aoi04が間に合い、マシンガンで応戦する。そんな彼女に対し「お、あいつの動きイイ感じ！……俺も手合せしてなー」なんて呟き、048Wから「今はお客さんをもてなさないと」と突っ込みを食らっている。
（すべて順調。これなら、そろそろ終わらせてもいい感じかしら？）

「……さて、仕上げと行きますか」

　Wired Empressはそう言うとRitori027やカエル型たちへ、周囲の仲間たちへと退避信号を発する。
　改変カラス型によって内部を破壊され続ける木馬型。その中で、Ritori027もまた基幹部分を破壊していた。
（なかなか強固ね。でも……私たちにかかれば！）
　予想以上に複雑な内部に少し苦心していた彼女だが、改変カラス型に援護され、カエル型に守られた彼女に恐れはない。
　だが、聞こえて来た退避信号にRitori027は反応する。彼女はすぐさまカエル型たちと共に木馬の中から脱出。その瞬間群がってくるカラス型を電磁エネルギーで一掃する。
「無事か？」
　援護なのだろう、Collectが問いかける。その背面をAoi04が銃で、048Wがメガホンでカラスを始末する。
「下がれ。Wired Empressからエネルギーを感知した。Code:P.S、カラス型放出を止めろ」
「ん……りょーかい」
　K-403.4のアナウンスに、Code:P.S が改変カラス型の制作をやめる。そしてAI達が一気に距離を置き、それを合図にWired Empressから強力な周波数が発せられる。
（カエルちゃん！2600hz！！　電話線の時代より受け継がれた誤作動の周波数よ！）
　彼女のカエルたちが泣き声を上げることで木馬が震え始める。そして、今まで受けた攻撃が原因で自壊を始めたのだ。
　合わせて生き残っていたカラス型も自壊する。徐々に消えていくウイルス。それらを見ながら、破片をCode:P.Sが回収していく。
　木馬の姿が無くなった時、そこにはAI達だけが存在していた。

　――侵入したすべてのウイルスは消去されました。
――繰り返します。侵入したすべてのウイルスは消去されました。

　その放送に、すべてのAI達が、己が使命を果たしたことを感じ取ったのだった。

「お疲れ様。すべての戦闘行動が終了したわ。警戒解除」
Wired Empressがそう言えば、全員が警戒を解く。
「これでフィニッシュ、か」
「……終わった。休眠体制に入る」
　Collectが武具を仕舞い、戦闘モードから待機モードへ。K-403.4は次に備える、と伝えると元居た場所へと戻り直ぐに休眠に入ってしまった。
「ちょっとはおしゃべりでもすればいいのに」
　Collectが苦笑する横をすり抜け、Aoi04が本来の仕事を開始する。齧られたデータを徐々に回復するべく、プログラムを構築し始めた。
「そこどいて～。応急処置したところをチェックするから！」
　おっと悪い、とCollectが退けば、Aoi04はウインドウを開いて損傷個所のチェックを始めていた。
「データ、いる？　まだまだ取り込んでいるけど」
　そんな彼に声をかけて来たのは、収集・解析が本来の仕事であるCode:P.Sである。
「んー、俺は俺で得たから今はいい。でも、なんかおかしな事があれば教えてくれよ？」
　それだけ言うとCollectはパトロールに行ってしまった。
　一方、048Wは危機が去ったことを伝えて回っており、その傍らには護衛としてRitori027が傍についている。基本、迎撃を担当する防衛プログラムだが、最後の仕事なのだろう。
「これが終わったら休眠にはいるのか？」
「ええ。少しばかりエネルギーを使いすぎたわ。次に備えないと」
　048Wの問いにRitori027は周囲を警戒しながら答える。もう少しで終わる、と彼が言えばRitori027は了解、と１つだけ答えた。
「さて、私もしばらくの間休眠しましょ」
　Wired Empressは全体が通常の状態に戻っていく様子をしばし観察していたが、やがて満足げに休眠モードへと入ったのだった。

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