ねこのまつりでつかまえて｜リアクション

ねこのまつりでつかまえて

　エピローグ

　祭のにぎわいはもう、夢であったかのように遠くなっている。
　あの明るさも今はない。ただ街灯のとぼしい光があるのみだった。
　星が丘寮まで五十嵐尚輝は、送っていくと申し出た。
　悪いですよ、と遠慮する気持ちより、少しでも長く一緒にいたい、と望む気持ちが勝って、御巫時子はありがたくその申し出を受けている。　
　門扉までたどりつくと、改めて時子は尚輝に向き直った。
「今日はお世話になりました」
「いえ、僕も楽しくすごせましたから」
　いますこし短い言葉を交わし、唐突にぷつっと、継ぐ言葉に困る。
「えっと……」
「それと……」
　言うべきことがある、と時子は思う。
　けれどその言葉が出てこない。
　尚輝ももどかしそうにしている。
　もしかしたら先生も、同じ気持ちなのでしょうか……私と。
　けれど迷いは一秒と少々、すぐに時子は言葉をつかまえていた。
「では、お休みなさい」
　ありふれた挨拶かもしれない。けれど今はこれが精一杯だ。
　尚輝もこれを聞くと、
「そうですね、お休みなさい」
　と、どこかほっとしたように返すのだった。
　尚輝の背を見送り寮の門をくぐろうとしたとき、ふいに時子の足元をなにかがかすめた。
「……テオさん？」
　いつ来たのだろう。
　いつからいたのだろう。
　呼びかけられ振り向いたのは、たしかに猫のテオだった。寮の敷地内であろうと、テオは自分の庭のように堂々としてる。
　そも、今日のきっかけはテオだったことを時子は思いだした。テオに背中を押してもらったように思えたから、勇気を出して尚輝を誘うことができたのだ。
　だから微笑みとともに、ごく自然に、時子はこう告げていた。
「テオさんありがとうございました」
　テオは何も答えない。
　ただ、しっぽをひとつ左右に振ると、顔を戻してまた歩き出したのである。
　

　――『ねこのまつりでつかまえて』　了

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あとがき

担当マスター：桂木京介
ファンレターはマスターページから！

　今回、勿体ない機会を与えていただき、ありがとうございました！
　マスターの桂木京介です。
　本リアクションも例によって、ほぼ時間字句通りに進行しておりますが、一部前後している部分があることをご了承下さい。

　もうじき終わる春の一日、猫まつりを楽しんでいただけたでしょうか？
　描写する私も、参加者それぞれが実在する人であるとみなし、その上での人間模様を楽しんで描いております。

　ラッキーキャットのイベントが圧倒的に人気でしたね！　もっとルールとか条件とか、明確にすれば良かったかなあ、と今さらながらちょっと反省しています。
　逆に、魔女裁判の寸劇に出ようという人がいなかったのも意外でした。登場人物募集、とはっきり書かなかったのがいけなかったかもしれませんね。

　毎回言っておりますが、ご意見ご感想を首を長くしてお待ちしております。

　それではまた、お目にかかれる機会がくることを祈っております。
　桂木京介でした。

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